「0÷0」は特別

0を0で割るわり算です。同じようにかけ算の式を探してみます。

かけ算 ← わり算
? ← 0÷0=?

すると、次のようになります。

かけ算 ← わり算
0×?=0 または ?×0=0 ← 0÷0=?

かけ算の式の?に当てはまる数を考えます。面白いことに?に当てはまる数はいくらでも見つかります。

かけ算 → わり算
0×0=0 → 0÷0=0
0×1=0 → 0÷0=1
0×2=0 → 0÷0=2
0×3=0 → 0÷0=3
…… → ……

つまり0÷0の答えは「無数にある!」と言えます。

このように「0で割ることはできない」ではなく「0で割る計算はできる」のです。ゆえに「どうして0で割ってはいけないの?」にある「いけない」に違和感が生じます。「いけない」には、許されないというニュアンスがあります。0で割るわり算はそれ以外のわり算と同じように考える(計算する)ことができる(許される)のです!

答えをまとめてみましょう。

0以外の数÷0の場合 …… 3÷0=(答えなし)
0÷0の場合 …… 0÷0=(すべての数)

なんと、0で割った答えは「ある」のです。それも2つ。これが問題なのです。

算数の式
写真=iStock.com/georgi1969
※写真はイメージです

a÷0は「割ってはいけない」ではなく「定義できない」

以上は小学校6年生に何とか説明できる解説です。これを大人向けに答えるとどうなるかを続けましょう。

0でない数で割るわり算(例えば6÷3=2、0÷5=0)には「答えが1つに決まる」という大きな特徴があります。もちろん、たし算3+5、ひき算6-4、かけ算8×3もそうです。どんな数同士のたし算・ひき算・かけ算でも答えは1つに決まります。

ところが、0の数で割るわり算「a÷0」は、「答えが1つに決まらない」計算なのです。数学ではこのことをそれぞれ「演算が定義できる」「演算が定義できない」と表現します。高校までの算数・数学では「定義できる(答えが1つに決まる)」演算しか習いません。a÷0には答えが2通りある、すなわち答えが1つではありません。これを数学では「計算(演算)が定義されない(できない)」と表現します。これが「0で割ってはいけない」の正体です。

よく言われる「0で割ってはいけない」「0で割ることはできない」という表現を「0で割る計算(演算)は定義できない」と比べると、どちらも「ない」という否定表現のところだけは同じです。しかし「いけない」には「善悪」のニュアンスがあります。善悪は主観的です。人によって何が善で何が悪なのかは異なります。