なぜ、年間400冊本を読めるのか

さらに「小学生時代に何かに打ち込んでいましたか」という設問には、94%の東大生が熱中したものを答えてくれた。

【図表】小学生時代に何かに打ち込んでいましたか

特に多かったのが読書。知性は書架で育つということか。「図書館に毎日通った」(理一2年・男)、「1年で400以上冊読んでいた」(大学院・男)などのほか、図書館の棚の本を全部読んだという猛者は何人もいた。

どうすればスマホ全盛のご時世、そこまで本好きになるのか。「両親とも読書好きで大きい本棚があった」(農学部4年・女)、「(本を読むと)国語教師のおじいちゃんがすごく褒めてくれた」(法学部3年・男)、「家族全員が読書をしている時間があった」(大学院・男)といった回答が。家族の生活習慣や声かけの影響が大ということだ。

東大生は習い事も本気だ。「暇な時間はずっとサッカーをしていた」(理学部4年・男)、「4年間かけてけん玉道初段を獲得した」(理二2年・女)、「バレエに最大限の時間を割くために毎朝5時に起きていた」(大学院・女)など。

続けられた理由は「タイムが上がる達成感」(工学部3年・男)や「周りより少しでも早くできるか競っていた」(理学部4年・男)など、上手に目標設定をしたり、ライバルと競ったり、ゲーム感覚で楽しむという工夫をしていたことがわかる。

驚かされるのは、今でいう探究活動のように、知的な事柄を追求していた子も多かったことだ。

【図表】好きを探究

「毎週末、地元の科学館へ足を運んでいた」(大学院・女)という人や、「夏になると毎週末、父と一緒に近くの山や公園へ昆虫採集に出かけた」(大学院・男)という人も。

ほかの子が何げなく日々を過ごしているときも、何かに打ち込んでいるのだ。思う存分、熱中体験を続けられた理由として目立ったものは、「好きだから」「強制されなかったから」といったもの。面白いと思って夢中になっているから、どんどん上達する。がんばれば成果がでるという達成感が、勉強への意欲にもつながるのだろう。

大事なのは自分で決めること

では実際に、東大生が小学生のときに、熱中体験を続けることをサポートしてくれた親の声かけについても聞いてみた。

【図表】東大生の親はわが子の「好き」を応援

一番多かったのは、好きなことをやりなさいと、子供の夢中になっていることを応援する言葉だ。「やりたいことをやりなさい」(理二2年・男)、「自分のワクワクを大切にしなさい」(大学院・女)、「自分の人生だから好きに生きなさい」(理二2年・男)など。「自分で決めなさい」(農学部5年・男)と、本人に選択権を持たせる言葉もあった。

心理学でも、選択の機会を与えられたほうがモチベーションが高まることがよく知られている。たとえば、どのパズルに取り組むのかを自分で選んだほうが、より長く、楽しくパズルに挑戦することができる。東大生の親も、子供に自分で決めさせることで、結果として、熱中体験を継続する助けとなっているのかもしれない。

【図表】「好き」を続けられた「親の声かけ」

また、「博士になれるね」(医学部4年・男)、「すごいね、上手だね」(教養学部3年・女)などと、子供を素直に褒める言葉も多かった。なかには、「努力したおかげだね」(文三3年・女)、「たくさん本読んですごいな」(農学部5年・男)などと、具体的に努力を評価している声も。結果だけではなく努力の過程や、やったことを具体的に認めることで、「努力すればできる」という前向きな心理が育ちそうだ。

「やめてもいいよ」(文三2年・男)、「できなくてもいいから」(理一1年・男)などといった、失敗することを容認する声かけも多い。「一緒にやろう」(農学部3年・男)、「いつも応援してるよ」(大学院・男)などと共感して支える言葉を受けたら、安心して好きなことに取り組めそうだ。

一方で、「本はいくらでも買ってあげる」(理三2年・女)という声かけも、東大生やトップ中学に合格した家庭の取材でよく聞く。知的なことに対する好奇心を大切にする雰囲気が、子供の「なぜ」「どうして」という気づきを、思う存分探究に向かわせるのだろう。

※本稿は、『プレジデントFamily2025夏号』の一部を再編集したものです。