プライバシーや情報の流出リスクも

他方で、プライバシーや映像情報の流出リスクもあり、後に述べる通り、設置や運用上の課題も多い。そのために熊本市はモデル校での実施を通して、設置場所や運用の方法について検討するということだ。

こうした動きを受け、子どもと接する業務従事者の性犯罪歴を確認する日本版DBS制度の導入に向けて議論をしているこども家庭庁の有識者会議「こども性暴力防止法施行準備検討会」では、密室状態の回避という点での有効性を認めつつも、心理的圧迫や肖像権、設置コストなどの面から、懸念の声が相次いでいるという(※4)

本体よりも設置工事が高額

本件において、あまり論じられていないものとして費用面の論点がある。防犯カメラを設置するためには、防犯カメラ自体の購入やその設置工事といったイニシャルコストが必要である。さらに、消耗品費やメンテナンス費用としてランニングコストもかかる。

まず、撮影に必要なカメラであるが、安物なら数千円、高額なものになれば数万円という価格帯である。そして、屋外用のほうが屋内用のそれより高額である。教室に設置する場合、屋内用でじゅうぶんであるが、そうだとしてもその機能により価格帯はさまざまである。学校が導入する場合、近隣の電気屋へ発注することを考えれば、ネットショップよりもさらに割高となるだろう。すべての教室にある程度のスペックを備えたカメラを取りつけるとして、ロットが増えることを考慮しても1台1万円以上はかかりそうである。

じつは、大がかりな電器製品を導入するときもっとも費用がかかるのは工事である。学校は、家庭とちがい電気系統が複雑であり、校舎が古いとそのあたりも脆弱になっている。そのため、コンセントを増やせばよい──という気軽な対応だけではなく、キュービクル(配電の大元)と呼ばれる変電設備から電源をとらなくてはならない場合もある。そこから校舎内に配電するための工事がそれなりに大変で費用もかかるのだ(少しまえに、キュービクルから新設電源まで100メートルくらいある配電工事を発注したが30万円程度であった)。

※4 教育新聞「『教員の萎縮につながる』 SNS制限や防犯カメラ設置などに懸念」2025年7月22日

教室
写真=iStock.com/xavierarnau
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