親がためらわなければ、心を開いてくれる

私の不登校回復講座では次のように子どもと接していた方がいらっしゃいました。

・野球好きの娘に付き合って、球場に応援に行った
・サッカー好きの息子と一緒にワールドカップの深夜の実況放送を観戦した
・ゲーム(あつまれ どうぶつの森)に夢中になっている娘に教わりながら、一緒に「家」をつくった
・息子の誕生日祝いに大好きなVチューバーモデルのキーボードをプレゼントした。さらにネットに写真をアップするための撮影を一緒にした
・アイドルグループのコンサートライブに一緒に行った
(※Vチューバ―とは、CGキャラクターによって動画配信する人のこと)

これらの事例を見てみると、親世代からはなかなか一緒に楽しむことをためらう内容に感じるかもしれません。実際、受講生の方も、最初は子どもの世界を認められずにいました。しかし、親側がとにかく一歩歩み寄って一緒にやってみたそうです。

そのときの子どもの様子を聞いていると、「すごく嬉しそうでした」「いつも無口なのに、びっくりするくらい話してくれました」と表現される方がほとんどでした。子どもの上質世界を認めて共感できれば、閉ざしていた子どもの心の扉は一気に開いていきます。

息子を褒める父親
写真=iStock.com/allensima
※写真はイメージです

「共感できる」ように努める

もし子どもに共感することが難しいと感じたら、あなた自身の趣味があなたの親から否定された場面を思い出しましょう。私世代では、『りぼん』や『なかよし』などの少女漫画を禁止された、テレビの視聴に制限をかけられたなどといった例があります。そのときのつらい気持ちを味わうことから始めるのです。

野々はなこ『誰にも頼れない 不登校の子の親のための本』(あさ出版
野々はなこ『誰にも頼れない 不登校の子の親のための本』(あさ出版

たとえ想像のなかであっても、子どもの頃の趣味に対して「面白そうだね、一緒に楽しもう」と親に言われたら、悲しい気分になったでしょうか。きっと嬉しい気持ちを抱いたはずです。

このように自分が子どもだった頃を思い出して想像しながら、お子さんの上質世界についていろいろ質問してみてください。「それはどんなふうにやるの?」「どこがいいの?」といったように話せばいいです。

なかには全く共感できないという方もいらっしゃいますが、不安な気持ちは横に置き、お子さんが安心できるように笑顔を作って「女優」のように演技するといいでしょう。

学生時代の頃を思い出してみてください。好きな人に気に入られようと興味があるふりをして、楽しそうに聞き役になったことがあるのではないでしょうか。若い頃は好きな人を振り向かせるためにやっていたことを、子どもにやってみるのです。どうですか、ちょっと楽しくなってきませんか。ただし、学校や勉強のことなど子どもが嫌がる話題には絶対に触れてはいけません。