高いスコアだが、“詰め込み教育一辺倒”ではない

ちなみに、OECDが公表しているデータによると、例えば、PISA2018では、3分野すべてにおいて、中国が1位、シンガポールは2位となっている。しかしながら、他の国と違って中国は上海市や北京市など一部の大都市圏の生徒のみが参加しており、地方の生徒は参加していないので、国全体としての水準は不明だ。

それに対して、シンガポールも都市国家という特殊性はあるものの、国家単位で見た場合には、少なくともPISA2015以降で最も優れたスコアを出している。

なお、こうした好成績は、PISAに限られたものではない。IEA(国際教育到達度評価学会)が行っているTIMSS(国際数学・理科教育動向調査)と呼ばれる調査がある。

こちらは小学4年生と中学校2年生を対象に算数(数学)と理科の2教科を調査するものだが、2015年以降、2019年、2023年とすべての調査において、両学年・両教科を通じて、シンガポールが参加国中で最も高いスコアを出している。

PSLEをはじめとして、シンガポールの教育は、厳しい競争社会というイメージが強い。実際、塾や家庭教師のサービスなども広く利用されているし、親の教育参加も盛んだ。日本以上に厳しいと言っても間違いないだろう。しかし、少なくとも学校教育においては、いわゆる詰め込み教育一辺倒ではないところが興味深い。

マリーナベイ・サンズの近くにあるマーライオン・パークの本体像
写真=iStock.com/Jui-Chi Chan
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“総合的な学習の時間”や“ゆとり”もある

まず注目したいのが、2000年から導入しているプロジェクト・ワーク(Project Work)である。

白井俊『世界の教育はどこへ向かうか』(中央公論新社)
白井俊『世界の教育はどこへ向かうか』(中央公論新社)

これは日本が同時期に導入した「総合的な学習の時間」に近いものだが、生徒はおおむね4〜5名のグループに分かれて、教科の枠組みにとらわれずにテーマを決めて探究を行う。最終的に、学期末にプレゼンテーションを行うというプロジェクト型の学習である。

シンガポール教育省は、「プロジェクト・ワークは、様々な領域の学習で学んだ知識を統合したり、実生活上の状況に客観的・創造的に適用する機会のある学習を、生徒に経験させたりするものである。グループで学びながら、生徒たちは将来の学習や課題に備えて知識を増やし、重要なスキルを身につける」ことがねらいだとする。

さらに、2005年には、TLLM(Teach Less, Learn More:より少なく教え、より多く学ぶ)イニシアティブを開始している。TLLMが意味する通り、学習内容を削減することによって子供たちや教師に「ゆとり」をつくり、学習の質的な深さを目指すものである。

古典的な丸暗記や知識再生型のテストのための学習などを減らし、その分、アクティブ・ラーニング型の授業を進めることで探究を行うものとされている。