小6で「その後の進路」が決まる

日本でも中学受験は行われているが、あくまでも希望者だけが受験するのに対して、PSLEは、シンガポールの小学校6年生全員が受験しなければならないものである。何よりも、その成績によって、中学校以後の進路が実質的に決まることから、アジア型の受験社会の象徴のような存在となっている。とりわけ大きいのが、コース分けの仕組みである。

シンガポールの中学校には、エクスプレス、ノーマル(アカデミック)、ノーマル(テクニカル)という3つのコースがあるのだが、特にエクスプレスに進むためには一定のスコアが必要である。

そのため、親も子供も必死である。塾や家庭教師などのサービスを使うことも多いし、子供だけでなく、親を対象にした対策講座も開かれている。もちろん、全員が希望のコースに進むことができるわけではないため、希望がかなわなかった子供たちが精神的にダメージを受ける場合も生じるし、偏見やレッテル張りにつながるとの指摘も根強かった。

実際、シンガポールのテレビ局CNAが小学校5、6年生の親1000人を対象に行った調査によると、PSLEが重要だという人が99%に上る一方で、子供がストレスを感じているという人が85%、親自身がストレスを感じているという人が64%に上っている。

日本から「教育移住」するケースもある

そのため、PSLEについては、同国内でも繰り返し議論が行われてきたが、2024年からは、従来のコース分けに代わり、教科別バンド方式(SBB:Subject-Based Banding)に全面的に移行することが決まっている。

従来は別のコースに振り分けられた生徒であっても、今後は同じクラスに在籍しながら、数学や英語などの教科については、学力に応じてレベル別(G1〜G3)の授業を受けることになっている。

もっとも、新制度においても、どのレベルの授業を受けるかは、基本的にPSLEのスコアによって決まることには変わりがなく、PSLEが重視されること自体は今後も続きそうである。また、PSLEで良いスコアをとったとしても、シンガポールの教育は試験の連続でもある。

特に、シンガポール国立大学などの難関大学に進学するためには、イギリスの影響を受けた大学入試の仕組みであるGCE(General Certificate of Education)のO(ordinary)レベルやA(advanced)レベルの試験に合格しなければならない。

しかし、そうした厳しい側面も含めて、シンガポールの教育は注目を集めており、日本からも、子供のために「教育移住」するケースもあるようだ。英語が主要な公用語とされており、日常生活を通じて語学力を身につけられることもあるが、シンガポールが国際的な学力調査で優れた成績を示していることも大きいだろう。PISAには2009年から参加し、図表1に示すように、一貫して高い水準を維持しているだけでなく、さらに上昇傾向を示している。

【図表】シンガポールのPISAスコアの推移
出典=『世界の教育はどこへ向かうか』(中央公論新社)