トップ営業マンは初対面で決めない!

大阪ガス行動観察研究所所長 
松波晴人氏

同じ相手と接したり、同じ光景を眺めたりしても気づきを得て成果を残す人と、何も気づかず成果を出せない人がいます。

その違いは心理学でいう「フレーム」を外せるかどうかにポイントがあります。フレームとは自分の見聞きしたものをどう切り取るかという物事のとらえ方を指し、それまでのフレームを外して、新しい見方をすることをリフレームといいます。

物事を見るたびに最初からいちいち考えるより「前はどうしたか」「ほかの人はどうしているか」といったフレームで自動的に解釈したほうが楽です。しかし、フレームが固定されていると、周囲で興味深いことが起こっていても、それに気づかず自動的に処理してしまうことになります。

「人はこうあるべきだ」という価値観や信念もフレームの1つです。人間には価値観に合致することには気づく半面、価値観に反することは過小評価し、場合によっては無視するという傾向があります。それは、自分の思いと事実が食い違っていることを認めたくないからです。これを認知的不協和といいます。しかし、それを乗り越えないと新しい気づきは得られません。

以前、営業マンの行動を観察したときのことです。優秀な成果をあげている人と普通の人の違いは、相手がどのような人かを安易に決めつけずに相手を観察し続け、気づきを得て、行動に反映させる点にありました。

人間は初対面の印象に強く影響されます。しかし優秀な営業マンは「このお客さまは丁寧なサービスを好む」と最初の印象を持っても、その後も相手を観察し、「本当は丁寧にやるとうっとうしがる人」と気づけば即座に対応を変えるのです。

一方、普通の営業マンは第一印象から頑として離れず、対応も同じ。お客さまが「もう帰ってほしい」というサインを出していても気づかないままでした。

優秀な営業マンは意識せずともリフレームし、考えながら相手を観察しています。しかし、そうでない営業マンは相手をただ見ているだけだったのです。