ブログの書き込みを定量分析することで、大局的なクチコミの動向や商品の売れ行きを推測できることはすでに説明しました。さらに踏み込んでブログの書き込みをヒットにつなげるには、書き込みの内容を読んで、消費者の動向や隠れた本音を知ることが必要です。つまり定量分析と定性分析を組み合わせることでクチコミの世界は可視化されます。

定性分析の基本はブログに書かれた内容を読み解くことですが、これが難しい。ある映画を観た感想として「ストーリーは感動的だったけど主演俳優の演技はいまひとつだった」とあったら、この映画の評価はブロガーにとってよかったのでしょうか、悪かったのでしょうか。また直接的な感想や意見が少ないのが日本人のブログの特徴で、「微妙」とか「まあまあ」といった曖昧な表現が多い。このようなモヤモヤした言葉から、評価のよし悪しを結論付けなくてはなりません。

そのための方法論の1つがPN(ポジティブ・ネガティブ)判定です。たとえば映画の評判と興行収入の関係が知りたければ、作品ごとにブログを集め、エントリー1つ1つについてP(肯定的感想)かN(否定的感想)かを読んで振り分けます。

商用のブログ分析サービスには機械的にPNを自動判別してくれるものもありますが、機械判別では読み取れないケースが少なくない。よって機械判別だけに頼らず人力での判定も試して両者を比較するのがベストです。私たちは独自の評価用システムを構築し、話題になった多くの映画作品についてPN判定を実施してきました。結果、全体の傾向としてはポジティブ評価の数値が高く、平均73%が好意的な書き込みとわかりました。

好意的な書き込みが多い作品は興行収入も高い傾向が見て取れましたが、興味深いのは爆発的なヒット作品では逆にポジティブの割合が減っていくことです。エンターテインメント業界には「賛否の分かれる作品はヒットする」という経験則がありますが、私たちのPN調査からはこの業界仮説を裏付ける結果が出たわけです。