<strong>佐川眞人●インターメタリックス代表取締役</strong>。1943年、徳島県生まれ。68年神戸大学工学部電気工学科修士課程修了。72年東北大学大学院金属材料工学博士課程修了後、富士通に入社。82年住友特殊金属(現日立金属)入社。88年インターメタリックスを創設し、現職。ネオジム磁石の発明者として世界的に有名。
佐川眞人●インターメタリックス代表取締役。1943年、徳島県生まれ。68年神戸大学工学部電気工学科修士課程修了。72年東北大学大学院金属材料工学博士課程修了後、富士通に入社。82年住友特殊金属(現日立金属)入社。88年インターメタリックスを創設し、現職。ネオジム磁石の発明者として世界的に有名。

ジスプロシウムは、高温でもネオジム磁石の性能が落ちないように添加する調味料のようなものだ。少し混ぜるだけで材料が持つ本来の性質を一変させることができ、磁石の製造に欠かせないレアアースなのだが、埋蔵量が少なく、常に供給ストップの不安にさいなまれてきた。これを回避する磁石をいかに開発するかがインターメタリックスの最大の使命になったわけだが、佐川は同じレアアースでもネオジムとジスプロシウムとの根本的な違いを、力を込めて説明した。

「ジスプロシウムは中国でもわずかに1ヵ所、広州周辺でしか採れないので、半永久的に供給不足の不安から逃れることができません。それに対し、ネオジムは世界中で2000万トンの埋蔵量が確認されており、それも米、中、ロ、豪など世界各地に分散していて、中国はそのうち3分の1を占める程度です。つまり、ジスプロシウムの問題さえ解決すれば、ネオジムはあと500年ぐらい持ちます。だから、ネオジム磁石の将来はまったくといっていいほど心配ないのです」

だからこそ、ジスプロシウムを回避する製造方法の開発に取り組んできたのであり、少しずつ研究成果が表れてきている。それは、「プレスレスプロセス」と「粒界拡散法」と名づけた新たな製法で、12年末の量産化に向けて最後の追い込みに入っている。

「これら2つの製法が軌道に乗れば、将来はジスプロシウムの添加量を10分の1に減らして量産することができる」と、佐川は期待を込めて語った。

(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

(大沢尚芳、永野一晃=撮影 AFLO)