日本が危険な地震国であることは、マスコミのおかげで国民に周知徹底されてきた。しかし、地震よりはるかに壊滅的なダメージを与える火山の噴火が日本の国土をつくったことを知る人は、意外に少ない。

地震は一瞬の破壊力で都市を襲い、ライフラインを寸断する。しかし、噴火は一時だけ人間の住空間を奪うのではない。地震とは比べものにならない広範囲の生き物すべての営みを破壊する。700℃を超える高温、時速100キロメートル以上の火砕流が国土を焼き尽くすし、加えて何十年という長期間にわたり、地球規模の気候変動をもたらすことがある。こうした破局的な大噴火が、世界有数の火山国である日本列島では頻繁に起きてきたのである。

本書では日本で起きた破局噴火の災害がくわしく紹介される。さらに、人類全体を存亡の危機にさらす世界各地の巨大噴火についても、驚異の実像が開示される。マグマ研究の第一人者である著者はこう述べる。

「火山列島日本で日々の暮らしを送っている我われは、たとえ『破局噴火』の運命の日が訪れたとしても臆することのないよう、常日頃から覚悟をかため、その対策を考えておく必要がある」(24ページ)

破局噴火を起こす火山には「カルデラ」ができる。カルデラとは、地下のマグマが一気に噴出したため地表に大きな穴があく現象をいう。日本には熊本県の阿蘇カルデラなど数多くのカルデラ火山があるが、いずれも過去に破滅的な噴火を行った痕跡である。

カルデラ火山には、大噴火の後しばらく休んでから破局噴火を繰り返すという「くせ」がある。過去の実績を見ると、日本列島ではおおよそ1万年に1回くらいで破局噴火が起きた。おまけに、噴火後の休止期間が長ければ長いほど、次の破局噴火が起こる危険性が増す。著者はこれを「悪い奴ほどよく眠る」(97ページ)と表現する。

この計算でいくと、現在の日本はいつ破局噴火が起きてもおかしくない状況にある。著者のご託宣はこうである。

「いちばん危険性の高そうなのが屈斜路(くっしゃろ)カルデラ(北海道)、次に可能性のありそうなのが阿多(あた)カルデラ(鹿児島県)と洞爺(とうや)カルデラ(北海道)となる」(101ページ)

火山学者のはしくれである評者も、本書を通読して火山災害の凄まじさを改めて実感した。将来あそこもここも危ないではないか、と背筋が寒くなる思いに駆られた。

さて、科学書を読む際に一番困るのは、周辺知識の不足である。そもそも言葉の使いかたが世間とまったく違う。これに対して、著者はコラムを用いて、わかりにくい専門用語の解説に多くのページを割く。学者がつい省いてしまいがちな説明を、読者の立場になって丁寧に語るのだ。ここには、破局噴火の危険性を何としてでも伝えたいという並々ならぬ熱意を感じた。

なお、巻末の「日本列島カルデラ紀行」は、オマケながらも楽しい記事である。火山は迷惑な災害を引き起こすだけでなく、豊かな恵みも与えてくれる。破局噴火をもたらすカルデラには、素晴らしい風景と温泉が伴う。

地球の荒々しい営みで散々おどかした最後に、旅行案内とはこれいかに! 「科学の伝道師」を標榜する評者が「してやられた」と思った絶品の付録である。旅行の際にはぜひ活用していただきたい。