怒りという感情は「ムカつく」「イラッとする」という強度の弱いものから「激昂する」など強度の強い、いわゆる「キレる」という状態まで、非常に幅のある感情。「怒っている」「怒っていない」の2択ではないのです。

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怒りのメカニズムは「コップの水」に似ている

人が怒りを感じるメカニズムは(1)出来事との遭遇、(2)出来事の意味づけ、(3)怒りの発生、の3段階を踏みます。人は、遭遇した出来事に対して、自分が「こうであるべき」と信じていること(=コアビリーフ)を裏切っていないかを基準に意味づけをします。コアビリーフを裏切っていると判断すると、まず「悲しい」「辛い」などの「1次感情」が発生します。それを器にためようとするのですが、器が満タンになると、「2次感情」である怒りが生まれるのです。

例えば、「取引先には10分前に到着するべき」というコアビリーフを持つ人は、部下が5分前に到着しても腹が立つでしょう。しかし、「ギリギリでも間に合えば問題ない」と考えている人であれば、3分前に到着しても腹が立ちません。「怒らない人=温厚」ではなく、たまたまその人のコアビリーフに触れていないだけというケースも十分に考えられるので、相手がキレないと決めつけて勝手に安心するのは危険です。

近年、人の価値観は多様化し、それにより自分の「~べき」が通用しないと感じている人も多いでしょう。風通しのいい職場が増え、部下が上司に意見しやすい土壌もあります。今という時代が多くの人にとってキレやすい環境である、といえるかもしれません。

では、上司や部下からキレられたらどうすればいいのか。大切なのは、「キレることで何かが伝えられる」という相手の思い込みを毅然とした態度ではねのけることです。相手は、大声で怒鳴れば思いが伝わってあなたが動き、自分にとって気に食わない状況が好転すると考えています。過去にキレて得をした経験があるから、何度でもキレるのです。その悪循環を断ち切るためにも、要求をのんだり、期待を持たせるような対応をしてはいけません。後でそれを覆せば、さらにキレさせてしまい、悪循環に突入です。