NHKの新経営委員長は野村ホールディングスの名誉顧問

NHKの最高意思決定機関である経営委員会のトップに、古賀信行・野村ホールディングス名誉顧問(73)が就任した。日本経済団体連合会(経団連)でナンバー2の審議員会議長も務め、金融・証券業界にとどまらない幅広い活動で知られる「財界の大物」だ。

NHK経営委員長に就任し、記者会見する古賀信行氏=2024年3月12日午後、東京都渋谷区
写真=時事通信フォト
NHK経営委員長に就任し、記者会見する古賀信行氏=2024年3月12日午後、東京都渋谷区

前任の森下俊三委員長(元NTT西日本社長、2019年12月就任)は、放送史に残る“愚行”を重ね、経営委の権威を地に貶めた。かんぽ生命保険の不正販売報道を巡る番組干渉、開示を義務づけられている議事録の隠蔽、認められていないBS番組のネット配信関連予算の承認など、公共の福祉という放送法の理念をきちんと理解していたとは言い難い失態が相次ぎ、そのうえ自らの責任を認めようとしなかった。当然のことながら、その醜態は激しい批判を浴びた。

それだけに、古賀新委員長には、経営委はもとより執行部を含めたNHK全体のガバナンスの立て直しに期待がかかる。だが、財界人としての実績はともかく、メディア人としては「ズブの素人」といってもいいだけに、単なるお飾りになりかねないという危惧も強い。

NHKは、ネット業務が放送と並んで「必須業務」となり、「ネット受信料」の創設も予定され、名実ともに「公共放送」から「公共メディア」へと移行する、開局以来の歴史的転換期のまっただ中にいる。国民の信頼を取り戻して「ニューNHK」の舵取りをできるかどうか、受信料を払っている視聴者は注視している。

報酬の財源はもちろん「受信料」

NHKの経営委は、経営全般に責任を負い、経営に関する基本方針から、予算や中期経営計画の決定、会長の任免に至るまで、強力な権限を持ち、執行部を監督する最重要組織だ。一方で、番組に干渉することは禁じられ、執行部の業務とは明確な一線が引かれている。

メンバーは、委員長以下12人、任期は1期3年で再選も認められている。国会の同意を得て総理大臣が任命するプロセスをみれば、任務の重要性がわかる。