いつかは集団生活を経験しなければならない

もちろん、風邪をひかないに越したことはありません。つらそうなわが子の様子を見ると、風邪をひかせたくないという気持ちは十分理解できます。ただ、一方でこんなデータもあります。カナダの研究では、就学前(2歳半より前)にグループ保育を始めたこどもは、当初は気道感染症や中耳炎の発症頻度が上がるものの、小学校に入ってからの感染症罹患はむしろ下がることが報告されているのです(3)。このような研究があることを知り、就学前に風邪をひくことはデメリットばかりではないと分かれば、保護者の皆さんも少し安心できるかもしれませんね。

子どももいつかは集団生活を経験しないといけません。保育園や幼稚園に入園し、風邪をひくのは、必要な免疫をつけるための通過儀礼とも言えます。決して保護者の判断が悪かったとご自身を責める必要はありませんし、通っているうちに回数も減ってきますのでご安心いただければと思います。

子どもたちと遊ぶ保育士
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「いつもと違う」が体調不良に気づくヒント

外来診療中によく聞かれる質問で「入園後、体調を崩すことが増えたが、早めに子どもの体調不良に気づける方法はないですか?」というものがあります。確かに早めに気づけたら、それに越したことはありません。そう聞かれた時にお話しするのは「『いつもと違う』をキャッチするアンテナを磨くこと」とお話ししています。そのためには次のチェックリストを日頃から確認しておくといいと思います(4)

チェックリスト~ 知っておくべき子どもの普段の様子~
□ 普段の平熱
□ 普段の食欲の程度
□ 普段起きているときの顔、唇の色
□ 手足のあたたかさ
□ 普段の便の回数、色
□ おもちゃやまわりへの興味
□ 泣き声の力強さ、泣き方 など

子どもの症状の重さを評価するには普段の様子とくらべることが必要なので、われわれ医師も「いつもと違うと感じるのはどういう点か?」を念頭に置いて質問します。ご家族がお子さんの普段の様子を把握し、その状態との違いを説明いただけると、正確な診察につながります。