「この解決策は自分で考えた」と思わせる

こうやって信頼関係ができたと確信できたところで、グレッグは初めて変化を起こす方向に舵を切る。ここでの目標は、相手にグレッグの望み通りの行動をしてもらうことだ。

ジョーナ・バーガー『THE CATALYST 一瞬で人の心が変わる伝え方の技術』(かんき出版)
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しかし、たとえこの段階まで到達しても、主役はあくまで相手だ。相手の主導で事態の解決を目指す。銀行強盗が人質を2人取って立てこもっている? 「逮捕するから手を上げて出てきなさい」と言っても、おそらくうまくいかないだろう。もちろんグレッグもそれを望んでいるのだが、銀行強盗からすれば刑務所には入りたくない。

ここでのコツは、銀行強盗に「この解決策は自分で考えた」と思わせることだ。こちらが相手を説得するのではなく、相手が自分で自分を説得する。グレッグは銀行強盗の言葉をそのまま使いながら、理想の結果になるように巧みに誘導する。強盗犯自身の判断で、両手をあげて投降するのがいちばんだという結論に到達することを目指す。

「投降が最善の選択肢」と思わせれば成功

しかしだからといって、犯人の言いなりになるという意味ではない。犯人にとってベストの選択肢は、銀行のお金をすべて持って逃げ、その後も絶対に捕まらないことだ。

一方でグレッグは、それを実現させるわけにはいかない。

グレッグの交渉術の真骨頂は、相手に命令しているような印象をまったく与えず、むしろ相手にとって最善の結果になるように努力していると信じさせることだ。そうすれば、強盗犯は知らず知らずのうちにグレッグの望み通りに行動するようになる。そして最終的に両手をあげて投降するのが、自分にとって最善の選択肢だという結論に到達するのだ。

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