現場のキャパシティを超えるかどうかは運任せ

当然ながら、あるエリア内で配達可能なキャパシティは限られている。

だから、本来はEC・通販サイトで商品を購入する際や、あるいは荷物を送ろうとする段階で、受付の可否を判断できれば良いのだが、これができない。

「配達ができるかどうか?」は、そのエリアを配達する配達リソース(配達員やトラックの数など)に加え、「どの荷物をどの順番で運ぶか?」という配達計画を勘案しないと、判断がつかない。だが、「ECで注文した時点で、運送会社の配達計画立案システム(配車システム)と連携し、配達可否を判断する」などというシステムは実現していない。

理由は配車システムを導入していない運送会社も多いことに加え、仮に配車システムを導入していたとして、「配達ができるかどうか?」を都度判断するという演算処理が複雑すぎて、システム上実現がとても難しいという事情もある。

つまり、配達時の時間指定は、実際に配達を担う現場のキャパシティなどをまったく考慮せずに行われている。極論すれば、配達現場のキャパシティ・オーバーが発生するかどうかは運任せなのだ。

小包を降ろす配達人
写真=iStock.com/ArtistGNDphotography
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持ち帰りばかりだとAmazonから“クビ”に

「配達量が多いのであれば、近隣の営業所に応援を要請したり、あるいは臨時でドライバーを増やせばいいのに!」と思う人もいるだろう。

もちろん、それができるときはやっている。

だが、そもそも配達員の数自体が足りていない上、配達量が多いタイミングは重なるものだ。例えば、Amazonのブラックフライデー(11月下旬開始)などで配達量が増加する時期はすべての現場で配達員が不足する。当然ながら、他の営業所に応援を回す余裕などない。

配達現場のキャパシティ・オーバーが発生したとき、その尻拭いをさせられるのは、現場の配達員たちである。

例えば、Amazonの配達員は、日々配達において、事実上の配達ノルマを課されている。

配達出発時点で託された荷物は、仮に持ち帰りになったとしても、金銭的なペナルティ(日給が減るなど)は課されない。だが、持ち帰りを頻繁に発生させていると、Amazonの配達ができなくなる。

事実上の配達ノルマをこなすために、配達員は食事はおろか、トイレに行く時間すら我慢して、なんとか配達を終えようと必死に働いているのだ。