大技でなくても印象に残る表現方法はある

フィギュアだとそれは「トリプルアクセル」とか「4回転ルッツ」とかの大技にあたるのかもしれません。「イナバウアー」は、荒川静香さんの金メダル演技(2006年トリノオリンピック)で「こんな大技もあるのか!」と驚きました。

ところが、フィギュアスケートに詳しい人によると、イナバウアーそのものは要素間のつなぎに使われるテクニックとのこと。それを荒川さんは、あの大きく背中を反らせる演技で、魅せる要素にしたのです。トークの場合も同様ではないかと思います。とりたてて大きな出来事ではなくても、その人なりのやり方で面白くなる、と。

そうすると、「面白いトーク」とはなんだろうということになります。私は、「興味を持って話を聞いてもらえること」ではないかと思っています。お笑い芸人がトークを聞いてもらいたいのは、笑ってもらいたいから。笑いという目的を達成する手段としてのトークです。笑いのためには必ずしも喋りである必要はなく、顔芸でも一発ギャグでもいいわけです。

目的のないトークはなんのためにあるのか

ビジネスマンのトークは、トークそのものが目的ではありません。その先にある商談をまとめたいから、商品を買ってもらいたいからです。これも手段としてのトーク。では、私たちが仲間内でするトークは?

藤井青銅『トークの教室 「面白いトーク」はどのように生まれるのか』(河出新書)
藤井青銅『トークの教室 「面白いトーク」はどのように生まれるのか』(河出新書)

なにかを売るためにやっているわけではありません。笑ってもらいたい時もあるけど、笑いなしの話をする時もある。そういう意味では、純粋トーク。ただ、話を聞いてもらいたいのです。結局のところ、「私の話を聞いてほしい」というのは「私に興味を持ってほしい」ということなのかもしれません。流行りの言葉でいう「承認欲求」でしょうか? たぶん、人はいつの時代も、誰かに話を聞いてもらいたいのです。

とはいえ、声高に「聞いて、聞いて!」と言っても誰も耳を傾けてはくれません。他人の自慢話にはつきあいたくありません。いわゆる「かまってちゃん」が繰り返すマイナスな発言も、わずらわしいだけです。トークではないけれど、SNSへの書き込みを見ていればわかります。長文でしつこく自己主張をされても、(本人は満足でしょうが)読む気にはなりませんから。

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