自民国対が「証人喚問の阻止」という最終防衛ラインを明確に定めて今国会に臨んだのに対し、立憲国対は予算審議を人質に取ってでも「証人喚問の実施」を勝ち取り、裏金疑惑の真相解明を目指す決意がそもそもなかったとしか思えないのである。正念場の裏金国会で、立憲が「批判より提案」を掲げてきたことのツケが回ってきた格好だ。

さらに背景事情として、安住国対委員長をはじめ、立憲の党運営を牛耳る野田佳彦元首相や岡田克也幹事長が、民主党政権時代に消費税増税を推し進めた「大物財務族」である点は見逃せない。

財務省は国会での予算審議を円滑に進めて年度内成立を確実にするため、与野党の国対委員長と密接な関係を築いている。予算配分権と国会対策こそ、財務省の政治力の源泉だ。とりわけ岡田幹事長や安住国対委員長が主導権を握る今の立憲民主党は、財務省と緊密である。立憲はそもそも予算案の年度内成立を阻み、財務省が嫌がる暫定予算の編成に追い込むつもりがなかったとみて間違いない。

岸田政権が続き、政治不信は高まるだけ

しかし、財務省を敵に回して予算を人質にとらない限り、数の力で劣る国会運営で自民党を圧倒し、証人喚問を勝ち取ることなど、土台無理なのだ。

立憲が「やってる感」をアピールするだけに終わった土壇場での審議引き延ばしに、日本維新の会や国民民主党は冷淡だった。維新は予算委員長の解任決議案と財務相の不信任決議案に反対して与党に同調し、国民も財務相の不信任決議案で反対に回った。

立憲が国会日程闘争を徹底して疑惑追及を推し進めることを放棄し、パフォーマンス優先のアリバイづくりに転じた結果、野党の足並みは乱れ、裏金疑惑をめぐる今後の国会での野党共闘に暗雲が垂れ込めたのである。

以上考察したとおり、参院予算審議での裏金疑惑追及にはさほど期待できない。衆院予算審議では政権与党が防戦一方だったが、3月2日の衆院通過・参院送付で年度内成立が確実になったことで、与野党攻防の潮目が変わる可能性がある。

疑惑追及に手こずる野党に対して世論が苛立ちを募らせれば、自民党の支持率は回復しなくても、野党の支持率も低迷し、どっちもどっちという空気が漂う展開は十分にあり得る。

そのなかで岸田首相が9月の自民党総裁選で再選を果たすことを目指して、4月に先手を打って電撃的に衆院解散・総選挙を仕掛ける可能性も十分にあり得るだろう。裏金国会はこれまでのところ、自民党の防御が優っている。

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