家族型ロボット「LOVOT」にかけられた想い

イノベーション部門賞は、『温かいテクノロジー』でした。

林要『温かいテクノロジー』(ライツ社)
林要『温かいテクノロジー』(ライツ社)

あなたは、家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」を知っていますか?

LOVOTのキャッチコピーは「愛されるために生まれてきた世界初のロボット」。丸みのあるフォルムにくりんとした目、体温を感じるあたたかさから、誰もがつい「かわいい!」と言ってしまうようなロボットです。本書では、そんなLOVOTの開発ストーリーや開発者たちがLOVOTにかける想いが語られます。

これまでのロボット開発では、一般的に「生産性や利便性の向上」が追求されていました。一方でLOVOTは、人に手をかけることを要求する、生産性や利便性の向上とは対照的な存在である点が特徴です。

人に手をかけることを要求する存在といえば、ペットを思い浮かべる人が多いでしょう。ペットもまた、人に手をかけることを要求し、その要求によって私たちを癒やしてくれる存在ですが、誰もがペットを飼えるわけではありません。

そこで生み出されたのがLOVOTです。そしてその背景には「生産性向上を目的としない温かいテクノロジーこそが、テクノロジーのイメージそのものを変えられるのではないだろうか」という著者、林要氏の想いがあります。

愛とは何か、感情とは何か、生命とは何か――。AI時代を生きる私たちに根源的な問いを投げかけてくれる、これまでにない一冊です。

自分にも相手にもメリットのある「任せ方」のコツ

マネジメント部門賞には『任せるコツ』が輝きました。

山本渉『任せるコツ』(すばる舎)
山本渉『任せるコツ』(すばる舎)

「この仕事、誰かに頼みたい。でも自分でやったほうが早いかな」
「誰かに手伝ってほしいけど、みんな忙しそうだ」
「こういうタスクは○○さんの得意分野だ。やってくれるかな……」

こんなふうに逡巡した結果、結局「自分でやる」を選んだことのある人は多いでしょう。本書はそんなビジネスパーソンに向けて、自分にとっても相手にとってもメリットのある「任せ方」を教えてくれる一冊です。

ポイントは、相手に気持ちよく引き受けてもらえるように、次の5つの要素を踏まえて依頼すること。

・意欲創出:相手がやりたいと思える文脈になっていること
・目的の明確化:なぜ必要なのか理由を伝えること
・欲求充足:利己的都合ではなく相手のメリットを示すこと
・選択肢の提示:断ったりスケジュールを変更したりする余白があること
・負担の配慮:負担を減らす工夫や相談の余地があること

また、単純に優秀な人やスケジュールが空いている人ではなく「意欲」と「適性」のある人に任せるという観点も重要です。本書では、意外と難しい「意欲」と「適性」の見極め方についても詳細に解説されています。

仕事はもちろん、家庭やPTAなどでも使える本書。頼み、頼まれることに苦手意識があるすべての人におすすめします。