2030年代に中国の政治体制に変化が起こる

その先に目を向けて、2050年の世界に視野を広げてみよう。日本はそこでどのような位置にあるのだろう。中国のあり方は変わると考えられ、日本にとっては非常に大きな機会が生まれる。

中国では、おそらく2030年代に政治体制になんらかの変化が起きて、いまの強権的な中央集権体制は、国民の要求や欲望を第一に考える体制にとってかわられると、わたしは考えている。このシフトが現在の政治体制のなかで起こるかどうか、体制の転換があるかどうかは判断がつかない。

天安門のイメージ
写真=iStock.com/The-Tor
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それが整然と進むか、無秩序に陥るかもわからない。それでも、中国は人口が減少している中間層の国になるのはまちがいない。2050年には、経済と政治の後退が鮮明になっており、その流れは21世紀後半もつづくだろう。

これをグローバルな視点から見ると、2040年代以降、後退する中国と、世界を支配しつづけるアメリカとの関係は、いまの2020年代の状況よりもはるかによくなる。

アジアという地域の視点で見るなら、日本にとって扉が開ける。東アジアの時間帯にある国々は、日本に経済のリーダーシップを求めるようになるのはまちがいなく、そしておそらく、政治のリーダーシップも求めるようになる。ただし、前に述べたように、後者については日本の国民が決めることである。

高齢化社会の手本を示せ

この機会を最大限に活かすために日本の社会が考えたほうがいいと思われることがいくつかある。

順不同で5つあげよう。

第一に、日本の偉大な企業の技術力を足がかりにする。日本企業は製品をよりよいものにする方法だけでなく、それをさまざまな社会に売り込む方法も世界に伝えてきた。日本の企業は政治家よりも世界を深く理解しており、教えることがたくさんある。

第二に、この後で明らかにしていくように、日本はこれからも高齢化社会と向き合っていくことになり、その姿は世界にとって教訓となる。教育の水準が高く、適応力があり、健康な高齢者は資源であって、重荷ではない。従来の雇用形態にかぎらず、広く社会で高齢者のもつスキルを最大限に活かすにはどうすればいいか、わたしたち全員が学ばなければならない。これは世界が人類の歴史ではじめて直面する状況である。ある意味では怖い。若い世界、とくにアフリカで人口が増えるなかで、老いる社会がはたしてリーダーシップを発揮しつづけられるのか。それでもそうしなければいけない。