キーエンス社員の平均給与は2000万円を超える。キーエンス出身のコンサルタントである田尻望さんは「高い給与を支払うには、従業員一人が1時間で生み出す価値を高める必要がある。そのためには他企業に“相見積もりされない状態”を作らなければいけない」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、田尻望『いつでも、どこでも、何度でも卓越した成果をあげる 再現性の塊』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

人材投資のイメージモデル
写真=iStock.com/Andrii Dodonov
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キーエンス社員は1人でいくら稼いでいるか

私がかつてコンサルティングエンジニア・販売促進技術職・海外販売促進技術職として在籍していたキーエンスは、営業利益50%超、平均社員給与が2000万円を超える驚異的な会社です。

2023年2月に提出されたキーエンスの決算書(2023年5月発表「2023年3月期 第3四半期決算短信〔連結〕」)によると、売上高は9224億円、営業利益は4989億円です。

キーエンスの全世界の総従業員数は約1万人です。単体では、約2800人です。

総従業員数で営業利益を割ると、一人あたりの営業利益は4000万円以上となります。

つまり、営業利益ベースで考えても、全世界の従業員がそれぞれ年間4000万円以上を稼いでいるという状態です。

もちろんこれは、キーエンスの高額な給料を支払ったあとの数値です。

平均年収2000万円超といわれる給料を含めると、キーエンス単体の一人当たりが出している利益は1.6億円くらいになるのではないでしょうか。

「叶えている顧客ニーズの量」が収入を左右する

社会に価値を提供すれば、会社はその見返りとして、社会からお金をもらう仕組みになっています。

つまり、キーエンスは社会に提供している「一人あたりの価値」が非常に高い企業なのです。

キーエンスよりも大きな売上高の企業はたくさんあります。

ただ、従業員一人が1時間で生み出している価値の金額では、キーエンスは製造業においては圧倒的な状態です。

一人あたりが生み出す価値の大きさは、従業員の収入の高さにつながります。

日本の労働市場における大きな問題として「給料が安い」ことが挙げられます。

給料が安いのは、キーエンスとは対照的に、一人が1時間で生み出す価値、つまり叶えている顧客ニーズの量が少ないために起きている問題なのです。

キーエンスの場合、一人の従業員が叶えているお客様のニーズの量が非常に多いと言えます。

より正確に表現すると、「高い価値を持つニーズを叶えている」と言えるでしょう。