権力を握るには「天皇のおじいちゃん」になる

「『華麗なる一族』と『ゴッドファーザー』を足して3倍にしたくらいの面白さ」というNHKの触れ込みは、藤原北家という華麗なる一族の中で、コルレオーネ・ファミリーの3兄弟のような愛憎劇が展開する、ということなんだと思います。

では、この時代に権力を握るには何をどうすればいいのか。ちょっと説明が長くなりますが、ここからドラマの中の道長とまひろ=紫式部、そして登場したばかりのもう1人の大物有名人、清少納言(ファーストサマーウイカさん)との人間関係が見えてきます。

一言で言うと、天皇の外祖父――母方のおじいちゃん――になる、つまり自分の娘を天皇の妻にして、次の天皇となる男の子を産ませるわけです。そしてその子が即位したときに、その代理人みたいな顔をして好き勝手をするわけです。

松村邦洋さん
写真=大沢尚芳
松村邦洋さん

当時の結婚は婿入り婚

兼家の場合なら、娘の詮子(吉田羊さん)に産ませた円融天皇の子・懐仁親王を一条天皇(塩野瑛久さん)として即位させることがそれに当たります。“天皇のおじいちゃん”になるために、藤原北家の男たちはあの手この手で、時の天皇と自分の娘をくっつけようとするんです。

当時は天皇に限らず、男には嫁が何人もいてOK。「妻問い婚」と言って、夜な夜な男のほうが嫁の家に通っていました。通い婚とも言います。男は見初めた女性に対し、仲介者を立ててそのお父さんのOKをもらい、露顕ところあらわし、つまり披露宴を開いて始めて結ばれるんです。

この妻問い婚、一見してその日によって好きな女性を選べる男にとって都合が良さそうに見えますが、実は婿入り婚、つまりマスオさんですね。しかも、できた子どもは嫁の実家で育てますから、そこで一番えらい人、つまり嫁の父親が力を持ちます。

父親が婿の後ろ盾になってくれる半面、父親に「お前はダメだ」と言われたら、男はいやでも離婚しなければなりません。