政治家は方針転換をする、官僚は現状維持をする

実際のところ、政治家と官僚の関係性を説明しようと思ったら、それだけで本を1冊書けてしまうほど複雑なものです。どちらも政治を生業にしている点では同じですが、そのスタンスは真逆と言っていいほど違います。

私の考えでは、政治家は方針転換をするもの、官僚は現状維持をするものだと思っています。そんな真逆の両者が一緒に仕事をしようと思っても、「もうちょっとこっちの言うことを聞け!」という感じで、どう転んでもケンカになってしまうわけです。

景気が良い時代は現状維持の官僚スタイルで問題なかった

19〜20世紀のドイツの社会学者で、マックス・ウェーバーという人がいます。官僚というものを本格的に研究した人で、こんな言葉を残しています。

「最良の官僚は、最悪の政治家である」

これ、ホンマにその通りやと私は思っています。官僚という人たちは、「今の状態をキープしよう」という現状維持は得意ですが、「今の状態を何とかしよう」という方針転換が苦手です。「今までのやり方は正しい」という前例主義がベースにあって、昔のやり方をなかなか変えようとしません。

もっとも、官僚は政治家と違い、省庁という大きな組織に属しているので、組織を守るためにそういう姿勢になるのも理解できなくはありません。かつての日本なら、現状維持もアリでした。

かつての日本とは、例えば、昭和の高度経済成長期(1955年からの約20年)の頃。あの時代は景気もよく、放っておいてもどんどん経済が上向いていったので、現状維持の官僚スタイルで問題なかったと言えます。

でも、今の日本はどうでしょう。君もニュースで耳にしたことがあるかもしれませんが、景気は悪く、税金は上がる一方で、国民の暮らしは最悪の状態です。

日本は先進国にもかかわらず、30年以上も給料が上がっていない、極めて貧しい国に成り下がっています。こういう時代に求められているのは、現状維持の官僚ではありません。方針転換ができる大胆な政治家です。

そもそも、政治家は、国民の投票で選ばれた人たち。対して官僚は、国家試験に合格して職に就いた国家公務員です。政治を執るのは官僚ではなく、国民の願いを背負った政治家であるべきなのです。

なのに現状は、やたらとその方針に口を出してくるエラそうな官僚ばかり。さらに最悪なのは、そんな官僚にペコペコして、現状維持に徹してしまっている政治家が多いという現実です。これだけは必ず覚えておいてください。政治を執るのは官僚ではない。政治家なのです。