大山鳴動して小ネズミ3匹だった

自民党派閥による政治資金規正法違反事件で、検察当局は安倍派幹部7人について立件を見送った。党内には安倍派幹部らの説明責任と党による政治処分を求める声が高まっている。その一方で岸田派解散、それに続く安倍、二階、森山3派の解散が、派閥存続を決めている麻生、茂木両派への解散圧力となって、茂木派は分裂の危機に直面している。

東京地検特捜部は1月19日、安倍、二階、岸田3派の会計責任者らを政治資金規正法違反で在宅起訴、略式起訴するなど、この時点で8人を立件する一方、安倍派幹部7人について、会計責任者との共謀はなかったとして立件を見送った。安倍派からのキックバック(還流)された4800万円を政治資金収支報告書に記載しなかったとして1月7日に逮捕した池田佳隆衆院議員(57)と秘書(45)は26日の通常国会開幕日に起訴している。

自民党両院議員総会に臨む(右から)岸田文雄首相(同党総裁)、麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長
写真=時事通信フォト
自民党両院議員総会に臨む(右から)岸田文雄首相(同党総裁)、麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長(=2024年1月26日午前、国会内)

特捜部の結論は、国会議員3人、会計責任者ら7人の計10人の立件だった。大山鳴動して大ネズミ1匹くらいは期待されたが、小ネズミ3匹だった。

国会議員の立件は4000万円超が目安

パーティー収入などの不記載額は、5年間で安倍派が6億7500万円、二階派が2億6400万円、岸田派は3年間で3000万円だった。3派の総額は9億7000万円に上る。

安倍派の会計責任者(76)、二階派の元会計責任者(69)は在宅起訴、岸田派の元会計責任者(80)は略式起訴された。

安倍派のほかの国会議員では、大野泰正参院議員(64)と秘書(60)を5100万円の不記載で在宅起訴し、谷川弥一衆院議員(82)と秘書(47)を4300万円の不記載で略式起訴(26日付で罰金100万円と30万円、公民権停止各3年の略式命令)した。議員の立件は4000万円超が検察内部の目安だったといわれている。

不記載は議員がかなり具体的に秘書に指示しないと共謀の立件に至らないが、これらのケースは、議員本人が派閥事務局から現金で還流を受け、収支報告書に記載させないという意図が明確だったから立件できたのだろう。

池田議員は党の除名処分を受けたが、議員を続けている。大野議員は離党し、容疑は法廷で争う。谷川議員は離党し、議員辞職したため、4月に衆院長崎3区で補選が行われる。

二階派では、ほかに二階俊博元幹事長の秘書(55)が、派閥から得た3500万円を記載しなかったとして略式起訴された。