なぜ日本株は急上昇を始めたのか

いくつかの観点からも、最近の日経平均株価の水準は買われすぎでもなく、バブルでもないらしいことはわかる。それではなぜ最近になって突然日本株が上がりだしたのか。

上昇の背景には諸説あるが、基本的に株価というものは需給であり、「買うから上がる、売るから下がる」に尽きる。高尚な分析や有名学者の解説などが飛び交っているが原理は単純だ。つまり最近の日本株の上昇は「ずっと割安状態だった日本株に気が付いた投資家が買い始めて、それに追随する者が増えたので上がった」という状態である。

誰が買っているのか。その第一は欧米のファンド等のいわゆる「外国人」である。

これまでの日本は、少子高齢化が進み、人口が減少し、デフレが止まらず、国家財政は破綻寸前で成長のしようがない「株式投資の対象にならない国」と多くの外国人投資家に考えられていた。巨大IT産業が世界を席巻するアメリカ株、破竹の経済成長を続ける中国に注目が集まっていたこともあろう。

東京タワーの見える夕暮れ時の景色
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しかし、ここ数年アメリカは長引くインフレ退治のために、政策金利が急激に引き上げられてきた。今年は景気が悪化し、株価も米ドルも低迷するというのが基本的なコンセンサスになっている。

中国人投資家と新NISAの影響

同時に大きい動きとしては中国の低迷である。

中国はGDP(国内総生産)の3割を占めていた不動産が大不況で、大手デベロッパーは軒並み債務不履行状態で、兆単位の不良債権の元凶となっている。最近ではついに政府系デベロッパーですら期日のリスケを要求する事態に発展。中国不動産不況の象徴的存在であった恒大集団もついに香港の高等法院が清算命令を出した。不動産関連の投資は大きくマイナスとなり、関連ビジネスにも不況の風が吹き荒れている。

中国経済の悪化を嫌気した資金が「中国株売り・日本株買い」に向かっている。日本株ETFが買われ過ぎて、実態以上にプレミアムが付く状態となり、中国証券時報は日本株ETFへの投機を控えるべきだと警告するに至っている。

今年1月から始まった新NISAも株高要因になっているという指摘もある。NISAはともかく個人の関心が高い。また各種メディアもNISAを取り上げると販売部数が伸び、YouTubeでも閲覧数が伸びるとあってNISA関連動画が溢れている。

日本の個人投資家は逆張りを行う傾向があるが、NISAに関しては基本的に新規マネーであり、売買の方向感としては買いにならざるを得ない(いきなりベア投信を買うことも不可能ではないが、主流にはならないだろう)ことも需給的にはプラスであると思われる。

NISAは、確かに口座開設数は大きく増えているが、実際にお金が日本株に向かっているわけではない。相当部分がドル建てのアメリカ株インデックスなどに向かっており、株高の要因としては限定的だろう。