失敗例も成功例も山ほどあるが

減量であれ禁煙であれ、メディアの報道や研究結果をもとにした記事には、続かなかった失敗例が山ほどあります。

実際に行なわれた臨床試験では、自分の行動を変えようとした人がもとに戻る確率が驚くほど高いことが示されています。禁煙を試みた人の86%が結局はまた喫煙を始め、減量に挑戦した人の80%~98%にリバウンド経験がある(前の体重より増える場合も多い)そうです。

けれども、人生を変えることに成功して減量や禁煙をやり遂げた、あるいはあまり不平をいわなくなったという人を身近に知っているのではありませんか? では、減量や禁煙プログラムに関する研究における高い再実行率と、知人や友人のかなり高い成功率という2つの事実の折り合いをどうつければいいのでしょうか?

腰のサイズを測る若い女性
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よい習慣を身につけることで幸福度は大きく変化する

このパラドックスを解決しようとした、社会心理学者のスタンレー・シャクターの権威ある研究があります。シャクターはコロンビア大学の職員と自分の知人、そして夏の休暇をすごしたアマガンセットの海岸にいた見知らぬ人々と話し、太りすぎや喫煙の経験のある人がたくさんいることを知りました。つまり、現実の事例証拠から、多くの人が悪い習慣を捨てて、よい習慣を身につけることに成功したとわかったのです。

実際に、シャクターは海岸やオフィスでの広範囲にわたるインタビューによって、喫煙や肥満を自力で治した人が63%いたことを発見しました。

そこで彼は、一般的に知られている再実行率のデータが、「常習者の事例」(すなわち治療を受けに来た人々の例)の結果を表わしているため、偏ったものであることを結論づけました。自分で自分の習慣を直せる人は、治療を受けに来ません。さらに、禁煙のように何かを達成しようと試みるなかで、何度も挑戦した(そして失敗した)結果、ついに成功するのです。シャクターが発見した、63%の成功例の人々は何度も試みて、ようやく目標を達成しました。そして目標の体重になるころには、被験者にとって、その減量方法は「ほんとうの習慣」になっていたのでしょう。

物事の明るい面を見る、いまを楽しむ、許すことを学ぶ、人生の大切な目標に全力を尽くすなどの行動をすることで、あなたの幸福度に大きな変化が生まれます。そのような行動を「習慣」にするのは、間違いなくよい考え方でしょう。