固定電話の全盛期にできた古い法律だが…

もっとも、通信自由化からまもなく40年、NTTの分離・分割からやがて四半世紀。その間に通信市場は激変し、NTTを取り巻く環境も様変わりした。固定電話の全盛期にできた法律が時代に合わなくなっているのは確かで、適切な見直しは必要だろう。

日立製作所のロゴマークが見える、黒電話
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だが、喫緊の課題は、米国の巨大テックが席巻しWeb3.0や生成AIが主役となるネット時代にふさわしい情報通信法制を再構築することだ。NTTの再定義は、その中で考えるべきではないだろうか。

ライバル各社が指摘しているように、国民の負担をもとに構築してきた通信インフラをNTTから切り離して国民共有の財産として位置づけ、そのうえでNTTも含めた通信各社がさまざまなサービスを競い合う公正競争の枠組みをつくるのも一案だろう。いわゆる「上下分離方式」である。

折しも、NHKのネット事業の必須業務化が確定し、放送と通信の融合が名実ともに実現する局面を迎えた。放送も含めた情報通信市場の歴史的転換期といえる。となれば、筋の悪いNTT法見直しの議論は一刻も早く打ち切り、仕切り直して、地に足のついたゼロベースからの議論を始めなくてはならない。

総務省も、自民党も、通信・放送事業者も、有識者も、そしてメディアも、目先の利害にとらわれず、世界的な視野で情報通信市場の激動に取り組まなければ、日本のプレゼンスはますます小さくなってしまう。

突然、降って湧いたNTT法廃止問題

NTT法は、1984年に日本電信電話公社(電電公社)の民営化に当たって制定された。その後、NTT再編のために97年に大幅改正され、NTTグループを統括する持ち株会社と東西の地域会社を特殊会社として規定、事業活動に一定の制約を課し、現在に至っている。

NTT再編は、固定電話の全盛時代に、通信自由化で新規参入してきた新電電各社との公正競争をいかに進めるかに力点があった。このため、NTTには引き続き固定電話を全国あまねくつなげるユニバーサルサービスが義務づけられた。

ところが、その後、通信の主役は、固定電話から携帯電話やネット、中でもデータ通信に急速に移行。NTT東西の固定電話の契約件数は、ピークだった97年の約6300万件から23年3月には約1350万件と2割程度にまで激減してしまった。約2億1000万件の携帯通信の契約件数に比べれば15分の1だ。今や固定電話事業は、毎年巨額の赤字を出すお荷物になっている。

稼ぎ頭のNTTドコモも、携帯通信のシェアは35%程度にまで縮小、一強どころかKDDIやソフトバンクと競い合う状況が続き、NTTを取り巻く環境は様変わりしてしまった。

このため、たびたびNTT改革が話題になったが、本格的な議論にまで発展することはなかった。