「メイドインインディア」だから支持される

2023年の1年間、インド国内で売れた貝印の包丁は100万丁です。国内では第3位の売り上げでした。爪切りは20万個で、カミソリは男性用、女性用合わせて200万個、売れました。爪切り、カミソリも売り上げでトップ集団にいます。

いずれも他社製品との大きな違いは品質です。他社の製品は鉄をクロームメッキしたものですが、貝印はすべてステンレススチールです。切れ味がよくサビにくいし、長く使えます。研いで使えば長く持つのです。そして、ステンレススチール、プラスチックは100%、メイドインインディア。インド人はそこを喜ぶのです。加えて世界一の日本のテクノロジーが組み合わさっている。ここが重要です。

日本企業がインドで何かを売ろうと思ったら、インドと日本の組み合わせを考えなくてはいけません。日本の原材料、日本のテクノロジーだけではインド人は製品を自慢することができないのです。

包丁の話をしましょう。インドでは包丁は消耗品です。1年に1丁、買い替える人はごく普通にいます。日本人の包丁に対する考え方とはちょっと違っています。日本人は1丁の包丁を数年間は使うのではないでしょうか。

爪切りに込めた“日本らしい”きめ細やかさ

われわれは包丁のプライスポイントを幅広くとっています。さまざまな価格の商品を出しているのです。日本円で300円くらいの小さなナイフから日本円にすれば数千円の高級包丁まで売っています。そして、どれも売れているのです。

貧富の差が激しいインドでは商品の種類を絞るのではなく、多くの種類を出したほうがいい。それこそ70ルピーの包丁から2500ルピーの包丁(約124円~4500円)まで出すと、幅広くお客さんをつかめるわけです。だから、払える人は2500ルピーでも払う。払えない人でも、料理を作って食べなくてはならないので、70ルピーの包丁を買う。自分の懐に相談して買う人たちから、包丁の値段を気にしない人たちまで多くの層があります。

また、金持ちの家だからといって高級な包丁を買うわけではありません。インドではメイドさんが料理することが多い。主人はメイドさんに高い包丁を買って与えることはしないのです。

爪切りもまた好評です。爪切りは「KAI Tsumekiri」(199ルピー=354円)とあえて日本の名前で売っています。当社の場合、インドでは初めての「くふう」をしています。切った爪を収容するケース、爪のなかを掃除するピックを付けました。

インドでは切った爪を散らかすのは縁起が悪いとされています。しかし、これまでインドでは、爪切りはケースのない裸で売っていました。私たちはケースを付けて飛び散らないようにしたのです。インドでは初めて貝印がケース付き爪切りを開発して発売したのです。