日本の人口減少が止まらない。東京23区も例外ではない。近著『残酷すぎる幸せとお金の経済学』が話題の拓殖大学教授・佐藤一磨さんは「23区内では2035年をピークに人口減少に転じる。そして区ごとの人口格差は徐々に開いていく」という――。
渋谷のスクランブル交差点
写真=iStock.com/Marco_Piunti
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人口減少は東京23区も直面する問題

現在、日本は人口減少という大きな問題に直面しています。人口の減少は、2つの大きな社会問題へとつながっています。

1つ目は、経済成長の鈍化です。人口の減少によって、①働く人々の減少、②住宅ストックや企業の従業員1人当たり資本装備の減少、そして③新しいアイデアを持つ若い人々の減少による生産性の低下が発生し、経済成長が鈍化すると考えられています(*1)

2つ目は、社会保障制度を維持できなくなる可能性です。現在の社会保障制度は、現役世代が引退した高齢者世代を支える構造となっているため、少子高齢化によって若年人口の減少が進むと、社会保障制度が維持できなくなる恐れがあります。

これらの問題に対処するためにも、政府を中心として少子化対策が進められています。ただし、少子化対策によって人口減少を阻止することは難しい状況にあります。このままでは2060年前後に人口が1億人を切ってしまうと予想されているのです。

このように日本は人口減少という大きな問題に直面しているわけですが、日本の中心である東京も例外ではありません。東京には仕事も多く、全国から人が集まってくるため、人口減少の例外になるかと思いきや、2030年以降に人口減少が始まると予想されています(*3)

この中でも特に興味深いのは、23区の動向です。

2035年以降、23区内でも人口が増え続ける地域と、減少し始める地域に分かれていきます。東京の23区内でも人口格差が生じる可能性があるわけです。今回はこの点について詳しく説明していきたいと思います。

東京都の人口は2030年にピーク、23区は2035年にピーク

東京都は1959年以降、5年に一度の国勢調査のデータを用い、東京都の人口予測を行っています。予測の対象は、外国人を含めた東京都に常住する人口です(*2)。今回は2020年の国勢調査を基に算出された、2025年以降の区市町村ごとの男女年齢(5歳階級)別人口の予測値を活用していきたいと思います(*3)

図表1は2020年以降の東京都全体の人口予測を示しているのですが、2030年にピークとなり、人口は約1424万人となります。これ以降人口は緩やかに低下し、2045年には人口が1379万人になると予測されています。

次の図表2は東京23区の人口予測を示しています。これを見ると、区部の人口のピークは2035年であり、東京都全体よりやや遅くなっています。ここからは東京の23区以外の地域(多摩島しょ地域)での人口の減少が早いことが読みとれます。

いずれにしても、東京23区でも2035年以降に人口が徐々に減少していきます。