習近平体制の中国では、他国に対して強硬な対外工作が繰り返されている。今後はどうなっていくのか。『戦狼中国の対日工作』(文春新書)を書いたルポライターの安田峰俊さんは「過激な行動は出世と紐付いている。習近平が政治的実権を失えば、現在の姿勢は骨抜きになるかもしれない」という。ライターの西谷格さんが聞いた――。(後編/全2回)
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「ハエがウンコに」と投稿する外交官

前編から続く)

――攻撃的な姿勢と言えば、中華人民共和国駐大阪総領事の薛剣シュエ ジェン戦狼せんろう中国を象徴する人物ですね。

彼は近年、X(旧Twitter)での過激な投稿で注目されています。21年10月、国際人権団体アムネスティが香港から撤退した報道について「害虫駆除!!!快適性が最高の出来事がまた一つ」と書き込んだほか、日本の政治家の玉木雄一郎氏に対して「ハエがウンコに飛びつこうとする西側子分政治家」、アメリカ政府元高官に「気ちがいのこの人達がアメリカをダメにしたのだ。!!!」などと投稿し、話題になりました(※いずれも原文ママ)

――安田さんはこの薛剣総領事に、直接インタビューしています。どうやったのですか? そして、彼の人物像は?

なぜ、現役の中国総領事へのインタビューが成功したのかは本書を読んでもらうとして……。彼って、実際に話してみると非常に温厚で物腰も穏やかなのですが、「○○イニシアチブが……」みたいな“カタい日本語”は非常に上手ないっぽう、軽口を叩くような口語的な日本語はヘタなんです。

もう少し若い世代の中国の外交官であれば、日本のアニメに親しんでいる人が多いので口語も自然ですが、薛剣総領事の世代だと、若いときに生の日本と接した経験が限られている。外交官養成機関の北京外国語学院(現・北京外国語大学)で学んだ“カタい日本語”だけがベースになっている。