正月はテレビ観戦で箱根駅伝を楽しむという家庭は多い。往路・復路の優勝チームはどこになるか目が離せない。だが、スポーツライターの酒井政人さんは「箱根駅伝創設のもともとの理念は、世界に通用するランナーを育成したいという熱い思い。箱根優勝は素晴らしいが、五輪や世界選手権に選手を輩出する指導が今求められている」という――。
都内を走る電車内で掲出された第99回大会の中吊り広告
撮影=プレジデントオンライン編集部
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直近10年間、箱根駅伝で最も活躍した大学は?

箱根駅伝が誕生したのは1920年(大正9年)。2024年には第100回大会の節目を迎える。創設の原動力となったのは、「マラソンの父」として知られる金栗四三らの「世界に通用するランナーを育成したい」という熱い思いだった。

「箱根から世界へ」は現在も指導者、選手たちにとっての“理想形”になっている。一方で1987年に日本テレビ系が完全生中継を開始すると、箱根駅伝の人気が沸騰。箱根駅伝自体が大きな目標になっている選手も増えている。

学生スポーツだからこそ、さまざまな目標を持つ選手がいてもいい。だが、箱根駅伝の栄光だけでなく、もっと評価すべきことがあるだろう。

たとえば大迫傑(Nike)はかつて早稲田大の駅伝主将を務めた4年時、箱根駅伝に向けてフォーカスしていたわけではなかった。彼は来季のトラックシーズンを見据えて、米国でトレーニングを積んでいたのだ。その結果、1、2年時に区間賞を獲得した1区でトップ中継を逃すも、その後、トラック種目でリオ五輪に出場した。

誰もが大迫のような選択ができるわけではないが、筆者は箱根駅伝で活躍することよりも、世界で戦う選手の方が“上”だと確信している。

箱根駅伝の優勝回数は中央大が14回でトップ。2位は早大で13回、3位は日本大で12回。以下、順天堂大11回、日本体育大10回、駒澤大8回、明治大7回、青山学院大6回、大東文化大と東洋大の4回と続く。

では、直近10年間(14~23年)で最も活躍した大学はどこなのか。優勝3点、2位2点、3位1点で過去10年間の成績を合算すると以下の順位になった。

【箱根駅伝】
①青学大 21点
②駒大・東洋大 12点
④東海大 5点
⑤早大・創価大・順大・中大 2点
⑨日体大・國學院大 1点

1位は青学大の21点。ダントツの結果だった。この10年間で4連覇を含む6度の総合優勝。トップ3を外れたのは2度しかない。激動の箱根駅伝で驚異的な結果といっていだろう。

2位は駒大と東洋大だ。駒大は1位と2位と3位が2回ずつ。東洋大は優勝こそ1回だが、トップスリーが7回もある。東海大は2019年の優勝校だ。

続いて「大学日本一」を決める全日本大学駅伝をチェックしてみよう。

【全日本大学駅伝】
①駒大・青学大 17点
③東海大 9点
④東洋大 4点
⑤神奈川大・明大・國學院大 3点
⑦早大 2点
⑧山梨学大・順大 1点

トップは駒大と青学大。駒大は4連覇を含む5度の優勝。青学大は優勝こそ2回だが、トップスリーが9回という抜群の安定感を誇る。東海大は優勝1回を含む4年連続の2位以内。東洋大は2015年に、神奈川大は2017年に優勝を飾っている。

箱根駅伝と全日本大学駅伝の合算では1位が青学大38点、2位が駒大29点、3位が東洋大16点、4位が東海大14点。ここからは点差が開き、5位は早大・國學院大の4点、7位は順大の3点となる。

以上の国内大会の順位は学生駅伝のファンなら想像通りだろう。ところが、国際大会の活躍度では順位が大きく変動することになる。