「32歳までは結婚願望はなかったんですよね」

ケイコさんは不思議な魅力にあふれる人だった。まず年齢がわからない。先日のパーティへの参加が女性が40歳からだから、少なくとも40代なのだろうが、何も知らなければ35歳前後に見える。席に着くなり、失礼と思いつつ年を聞いた。

「46歳です。1977年生まれ。この間、ゲストハウスで出会った30歳の男の子と仲良くなって、でも私の年齢を知ったら引かれてしまい、あっという間にいなくなってしまって……」

そう言って目を細めて笑う。この笑い方がナチュラルでいいのだ。相手に媚びを売るようなしたたかさがなく、かと言って自分を卑下しているわけでもない。だから一緒にいるとほっこりしてしまう。

「どうして結婚しなかったんですか。それともご結婚されていた?」

続けて質問すると、ケイコさんは首を横に振って「なんかこう言うと負け犬っぽいんですけど……32歳までは結婚願望はなかったんですよね」と語り出す。

「35歳を過ぎると、明らかに風向きが変わった」

「20代は恋多き人で、いろいろな方とお付き合いし、中にはプロポーズしてくれた方もいました。でもコアに遊ぶ女友達はまだ結婚していなかったし、自分の人生はこれからっていう感じで結婚に意識が向かなくて。それで旅行関係の仕事をしていたのですが、32歳の時に手に職をつけたいと思って、街角で占ってもらったんです。そしたら占い師さんに『それよりあなた、この1年が婚期よ』と言われて、そうか結婚……と、急にスイッチが入りました」

高校の同級生や、かつて一緒に遊んでいた男友達などと連絡をとり、交際に発展した人がいたという。しかし、その男性は新興宗教の信者だった。彼が信じる教祖にケイコさんは結婚相手として認められず、また自分より教祖の意見を優先する男性に幻滅して別れを決意。次に付き合った男性はアルコール依存症のような状態で、やがて交際が難しくなった。

「35歳を過ぎると、明らかに風向きが変わったんですよね」とケイコさん。

「素敵だなと思う人は、もう結婚している。既婚者とお付き合いしてしまった時期もありました。結婚して子どもがほしいのに、将来に結びつくような出会いがなくなってしまったんです」