選挙権年齢が引き下げられても投票率は上がらない

ハンナ・アーレント(1906~1975)
政治哲学者・思想家。ヒトラー政権の台頭によりアメリカへ亡命。著書『全体主義の起源』を発表した。

【投票行かないマン】日本では2016年から、18歳以上が投票できるようになりましたけど、相変わらず若者の投票率は伸びないですね。僕もあまり積極的に行こうとは思えません。行く必要を感じないというか……。

【政治哲学者】それはよくない傾向です。投票しない人が増えるということは、政治参加する人が少ないということですから。

【投票行かないマン】でも仕方ないと思いますよ。今の現状じゃ、誰が政治をやっても世の中はよくならないと思うから、政治に関心がないんですよ。

【政治哲学者】そうですか……。ところで、あなたはハンナ・アーレントという政治哲学者を知っていますか? 彼女について知っていると、政治に少しは興味が出てくるかもしれません。彼女はドイツ出身のユダヤ人哲学者・思想家なんです。

多くの人が政治に参加しなければ全体主義が勃興しかねない

【投票行かないマン】ドイツ出身……ユダヤ人の方なんですね。

【政治哲学者】そうです。彼女は、ヒトラーが政権を握ると、1933年にパリに亡命します。しかしその後、ドイツがパリを占領したので、ニューヨークに亡命したのです。後に『全体主義の起源』を著しました。

KEYWORD 全体主義
全体主義とは、個人の自由や人権よりも、国家・民族の考えや利害を優先させる政治思想である。全体主義では、国家利益を優先して、個人の自由が抑えられる場合がある。

【投票行かないマン】全体主義ですか……。今の時代にはあまり関係なさそうですね。

【政治哲学者】いやいや、そうとも限りませんよ。そもそもナチス政権は、人々が自分の意見をもたずに周りに同調していった結果、生まれてしまったんです。多くの人が政治に参加して将来を決めていかないと、また権力者によって操られてしまうかもしれません。

【投票行かないマン】でも……その政治の内容が複雑でわかりにくいこともあります。候補者がなにを主張しているのかが、よくわからないんですよね。