スムージー専用ストローも環境配慮型

2021年にセブンが導入した「セブンカフェスムージー」を見てみよう。冷凍のフルーツや野菜が入ったカップを専用マシンにセットすると、出来立てのスムージーを味わえるという触れ込みで、「お店で作るスムージー」として大人気になった。

スムージーには専用ストローが欠かせない。日本ストローはセブンのリクエストに直ちに応じて専用のPHBHストローを開発し、全店舗に納入するようになった。

セブンカフェスムージーのストローも日本ストローが納入している
筆者撮影
セブンカフェスムージーのストローも日本ストローが納入している

言い換えれば、スムージー専用ストローという補完的イノベーションによってコア商品であるストレートストローの売り上げが伸びたのだ。

日本の中小企業にぴったりのイノベーションとは

日本のビジネス界でよく話題に上るのは破壊的イノベーションだ。①フィルム写真に取って代わったデジタル写真②タクシー業界に衝撃をもたらしたライドシェア③ビデオレンタル店を破たんに追い込んだ動画配信サービス――などが代表例だ。

さまざまな業界に破壊的影響を及ぼした米アマゾン・ドット・コムも忘れてはならない。

だが、破壊的イノベーションは非常にリスクが高い。失敗率は60~75%に達するとの試算もある。ロバートソン氏は著書の中で「破壊的イノベーションは既存のビジネスモデルを根本的に変えてしまうため、失敗したときのコストはとんでもなく大きい」と指摘している。

それに対して第三のイノベーションのリスクは小さい。大きな投資を伴わないことから、仮に失敗となっても致命的な損害は発生しない。逆に言えば、小さな投資で大きなリターンが生まれる可能性がある。

ロバートソン氏は次のように書いている。

〈第三のイノベーションではコア商品は従来とほとんど変わらない。そのため、補完的イノベーションが仮にうまくいかなかったとしても、企業は大きな打撃を受けないで済む〉

日本では社数ベースで中小企業は全体の99%以上を占める。全体の7割が赤字経営でぎりぎりの状況に置かれている。小さな投資で大きなリターンを狙える第三のイノベーションはぴったりではないだろうか。

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