アクアライン開通で「電車→高速バス」に

久留里線の沿線(千葉県木更津市・君津市)から東京方面への移動は、木更津駅で内房線の特急列車・快速列車への乗り換えがメインルートであった。この木更津駅は東京湾を航行するフェリーの港とも近く、かつての駅周辺は、富士見通りなどのアーケード街、そごう、ダイエーなどの大型店舗が賑わいを見せていた。

ところが、木更津市と対岸の神奈川県川崎市を結ぶ道路・アクアラインが1997年に開業、高速バスが次々と路線を開設したことで、状況は一変する。

木更津から首都圏に向かう高速バスが開業時の56便から20年間で8倍(476便)に増便するほど利用者が増加したのに対して、内房線は乗客の激減で快速の廃止、減便が相次いだ(2017年12月17日朝日新聞東京地方版より)。

首都圏への通勤手段としての高速バスvs鉄道の競争は、東京湾をショートカットする高速バスが、所要時間・料金ともに、あまりにも有利だったのだ。

JR木更津駅東口。首都圏への高速バスが頻繁に発着する
筆者撮影
JR木更津駅東口。首都圏への高速バスが頻繁に発着する

内房線に接続する久留里線も、鉄道移動自体が激減の煽りを受けて乗客減少が続く。

「久留里線→内房線」という首都圏通勤の動線は、自宅からクルマで高速バスのバスストップ(軒並み格安駐車場を併設している)→高速バスに転移し、減便によって久留里沿線内からの首都圏通勤はほぼ不可能となった。

「チャリより遅い」路線

さらに木更津駅周辺の空洞化で「週末ちょっと遊びに行くのに乗車する」ような需要も消え、気が付けば久留里線は、朝晩は高校生で満杯、それ以外はガラガラ状態に。こうして、周辺地域の中でも特に過疎化が激しかった木更津駅―上総亀山駅間を中心に、30年間で7割~9割激減という、著しい利用者減少につながってしまったのだ。

久留里線のコスパが著しく悪い原因として、近代化の遅れも挙げられる。交通系ICカードや線内の列車集中制御装置(CTC)などは軒並み非対応で、いまだに駅員・車掌の配置が必要な高コスト体質となっている。

線内は高校生に「チャリより遅い」と言われるほど低速(全区間32.2Kmで1時間以上を要する。実際には自転車より若干早い)で、総合病院が目の前にある上総清川駅ですらバリアフリー非対応。やむを得ない諸事情があるとはいえ、集客のための設備投資をおざなりにしてきた実態が垣間見える。

久留里線の中でも異次元の営業係数を記録した久留里駅―上総亀山駅間は、既にJR東日本から沿線自治体へ、鉄道のあり方についての協議の申し入れがあり、バス転換に向けた話し合いが進むだろう。

一方で木更津駅―久留里駅間の沿線には、人口が増加基調の地域(木更津市清川地区など)もあり、沿線自治体は支援を絞ったうえで、遅蒔きながらサービス改善に力を注いだ方が良いのではないか。