高速バスで路線の存在意義が薄れた

5位:花輪線・荒屋新町駅―鹿角花輪駅(岩手県、秋田県)

花輪線は、岩手県盛岡市から、秋田県・秋北地域(県北部の大館市・鹿角市など)や青森県・中南津軽地域(弘前市・大鰐町など)への近道ルートとしての役割を果たしてきた。

長期にわたる凋落の原因は、ほぼ並行して東北自動車道が開通したことでクルマ・高速バスへの転移が起きてしまったこと、さらに、東北新幹線の新青森延伸で「中南津軽地域へのバイパス」の役割をなくしたことなど。

JR花輪線 鹿角花輪駅
筆者撮影
JR花輪線 鹿角花輪駅

また、沿線の鹿角市にあたるエリアだけでも、50年間で人口3分の1という、鉱山の閉山にも起因する極端な過疎化も起きた。花輪線はコスパ以前に、全体的に時代の波にのまれた感がある。

高齢化とともに若者の減少も続き、2024年には再編によって沿線の3高校が合併。かつて全国に知られる吹奏楽の名門校だった花輪高校の消滅は秋田県内でも大きな話題となったようだ。

こういった高校の広域合併で遠距離通学が生じると、時として鉄道の需要を激増させる場合もある(例:熊本県「くま川鉄道」など)。

しかし、現状でも通学手段の7割が「家族による送迎」、鉄道利用による通学は現状でも6%程度(鹿角市の場合)。花輪線の利用者回復にあまりつながりそうにないのが悩みだ。

人気観光列車でも焼け石に水

7位:五能線・能代駅―深浦駅 ほか各区間

秋田県・青森県境の日本海沿いに進む五能線は、全長147.2キロの全線がJR東日本によって「ご利用の少ない線区」に指定されている。営業係数は911~5386だ。

路線全体で2億円弱の収入に対して、約40億円の赤字を出している。しかし、五能線の列車「リゾートしらかみ」は、利用者が年間10万人以上、累計200万人を越え、JR東日本でもトップクラスの観光列車に成長した。

野村総合研究所が2019年に公表した調査報告書によると、五能線の観光列車「リゾートしらかみ」の運行で追加発生する費用は年間で2億円、運賃による直接収入・物販や行き帰りの新幹線などで得られる収入は6億4000万円。さらに観光消費による波及効果は29億6000万円に及び、五能線の経営を下支えしている。

しかし実際には、沿線に宿泊施設などがきわめて少なく、回遊・長期滞在など、五能線沿線の利益には必ずしも繋がっていないという。

コンテンツとして全国的にも成功例に入る「リゾートしらかみ」ですら、鉄道の赤字をカバーできていないという事実は、観光列車が鉄道を救う施策の難しさを伺わせる。