「いままで取り組んできた品質に対する信頼と安心をより大切にしながら、4℃として絶対に変えてはいけないところは変えずに、流行とともにデザイン性は変えてゆく。もう一つは、お客さまの来店頻度を上げて、顧客化していくこと。4℃の一生のファンをつくっていくことは、人口が減る以上は取り組んでいかなければならないことです。国内マーケットで戦う以上は、1人のお客さまに1点でも多く買っていただく努力をつづけるのは当然のことです」(増田氏)

オンライン販売を強化する一方、リアル店舗の拡充のために積極的な投資もしている。

2023年3月には、東京・銀座の一等地である中央通りに面し、ティファニー銀座ビルの真ん前に置く旗艦店の4℃本店を全面改装した。

「時流に合わせた商品と店づくりを体感していただけるようになっています。コロナ禍で中止を余儀なくされていたお客さまを招いたパーティーも数年ぶりに開催して、カスタマーズ・ロイヤリティーも上げています。複合的な試みもあって改装効果が表れて、お客さまの評判もよく、売り上げも伸びています」(瀧口氏)

2023年2月期決算は、ジュエリーの売り上げが2017年2月期以来、6期ぶりの増収増益となった。活況を取り戻しながらも、店舗集約を図るなど、さらに経営改革を進めている。

瀧口社長
撮影=プレジデントオンライン編集部
時流にあわせた商品作りや、銀座の基幹店の全面改装など、ブランド価値を上げる試みが好循環を生み始めた。

インフルエンサーの変化

数字に表れる経営実績だけではなく、SNS上の多くのコメントにも変化が表れている。

あるツイッター(現・X)のインフルエンサーの1人は、ことしに入って発信内容が少しずつ変わってゆき、さんざん批判してきた4℃の製品を購入したと写真に添えながら、《4℃今までごめん。すき…》と投稿している。

「投稿を分析しても、80%以上がポジティブな意見で占められていますし、専門機関に調査を依頼しても、9割近くの人に好意的なイメージを持っていただいているという結果が出ます」

そう説明した瀧口氏は、「ブランドの認知度はもう充分です」と自信を見せる。

「金、銀、プラチナ、ダイヤモンドをはじめ、宝飾品は、信頼と安心がない限り、お客さまは買いません。優れたデザインであると同時に、高いブランド力と、お客さまの安心をしっかり保てるよう、品質も重視してきました。デザイン力も大切ですし、アフターケアやメンテナンスにも手厚いジュエリー会社としての信頼も高める努力を全社をあげてしています」

瀧口氏は、こうつづける。

「20代から50代の女性の80%の方には4℃を知っていただけています。男性でも50%くらいの認知度がある。売上高の規模が違う大手外資系ブランドと同等の認知度です。あとは、ブランドに対する好感度をより高めていくためにはどうしたらいいかと、中長期の目標に掲げながら、増田とも話し合っています。5万円台から10万円台のジュエリー全域をねらって、好感度を上げるためにも、デザインをどれだけよくしていくか、品質をどれだけ高めていけるか、いかに素敵な広告を打ち出していけるか、さらに魅力あるキャンペーンを展開していけるかと、目先の売り上げを追うより、無形資産ともいえるところを磨いていくことです」