往復10分の喫煙所まで行くのは「休憩」

●タバコ休憩が「休憩時間」と認められたケース

逆に、タバコ休憩が「休憩時間」と認められたケースが泉レストラン事件です(東京地判平26・8・26)。

原告の男性は、昼休憩の他に業務時間中に1日4~5回以上、職場を離れて喫煙所に行っていました。喫煙所は職場から離れていて、往復するのに相当の時間がかかる場所にあり、いったん職場を離れると戻るまでに10分前後の時間を要していました。

そのためタバコ休憩の時間中は労働から解放されていたとされ、休憩時間と判断されました。

この判例でタバコ休憩=休憩時間となった理由は以下の2点です。

・職場と喫煙所との距離が離れていて往復に相当の時間がかかった(10分程度)
・何かあった時にすぐに対応できる状況になく喫煙中は労働から解放されていた

ただし上記の条件を満たしていても、携帯電話などを常に持っていて、会社からの指示があればすぐに対応しているような場合は、労働する義務から解放される状態とは言えず、労働時間と判断される可能性もあるので注意が必要です。

込み合う渋谷駅付近の喫煙所
写真=iStock.com/Rich Legg
※写真はイメージです

1回10分、1日8回のタバコ休憩は1年で有給40日分に相当

判例ではありませんが、タバコ休憩が職務専念義務違反にあたるとして公務員が懲戒処分を受けた事例もあります。

大阪府財務部の職員が、14年半で計4512回(計355時間19分)職場を抜け出して喫煙した事例です。この職員は、6カ月の減給処分に加え、職務専念義務違反にあたるとして144万円分の給与を返還することになりました(2023年3月20日付 毎日新聞)。

給与の返還なんて、大げさ過ぎるのではないかと思う方も多いでしょう。

仮に月給30万円の人が1時間に1回10分間のタバコ休憩を行っていたとしたら、1日80分のタバコ休憩を取っていることになります。この時間を給与に換算すると1日約2500円分、1カ月約5万円分の給与ドロボーをしている計算になります。これが1年積み重なると、有給休暇にすると実に40日分(60万円)に相当します(1日8時間労働、月20日勤務想定)。

これは非喫煙者からすると見過ごせない金額ではないでしょうか。

タバコ休憩の頻度があまりにも多い、1回あたりの時間が相当長いなど、明らかにモラルに欠けている喫煙者には職務専念義務の観点から注意や指導を行うことが可能です。会社として適切な対処やルール作りを検討しましょう。