映像に潜む「やらせ」や「フェイク」

1985年あたりをさかいに、日本のテレビニュース番組やワイドショーには、画面いっぱいの書き文字を見せるようになってきた。キャスターが「では、次にオウム事件の背後に迫ってみたいとおもいます」と言うと、「麻原彰晃、少年時代の驚くべき事実」といったおどろおどろしい書き文字が画面にあらわれるという、あの手法だ。テレビが雑誌に近づいてきたのである。ワイドショーではだいたい15秒に1回の割合で文字が出る。

それでも、テレビカメラは真実を伝えているのじゃないかと反論する向きもあるだろうが、なかなかそうはいかない。ある抗議デモでおばあさんが転んだ画面のあとに、機動隊員が棍棒をふりかざしている画面がつながれば、その報道の狙いは明白だ。視聴者は画面の編集の仕方に注目したほうがいい。「やらせ」や「フェイク」も勘定に入れて見たほうがいい。

新聞や電車の中吊りには週刊誌の内容広告が載っている。派手なものが多い。派手といってもヴィジュアルに派手なのではなく、さまざまな特集記事を示す大小の文字がびっしりと並んでいるものだ。わざわざ週刊誌を買わなくとも、その内容広告を見ているだけで、どんなことが載っているかがわかるくらいだ。

読んでみて裏切られることも勘定のうち

こうした広告を飾っているフレーズはヘッドラインのお化けの一種なのであるが、読むほうもかなりオーバーな気分になっている。しかし、それが読者の好奇心をかきたてる。最近は新聞最終面の1ページ大のテレビ番組欄にもヘッドラインがくっつきはじめた。「あの梅宮アンナが話の途中に号泣」といったたぐいだ。「密林の奥に何かが!」などというわざとらしいものもある。けれども、視聴者はそのヘッドラインにひかれて番組を見る(あるいはバカバカしくなってテレビを見なくなる)。

ヘッドラインは内容そのものではない。しかるべき内容の特徴を引き出すフラッグ(旗)のような役割をもつ。そのフラッグの下に「かくかくの情報が集まっていますよ」という目印だ。

だから「誰も知らない渋谷のグルメ情報」とか「シワをとる化粧品教えます」という文句にひかれて、そのメディアを読んでみても、自分にぴったりのグルメ情報や美容情報があるとはかぎらないし、その情報が店の写真と2、3品の料理写真や品物の写真だけで、もっと知りたいことが書いていないということもある。そんなことは読者もわかったうえで、そのフラッグ(目印)の下の情報ファイルをあける気になったのだ。裏切られることも勘定のうちなのだ。