惚れ込んだ英アームの買収を電撃発表

二番目に登場したのは、ナウトという自動車の自動運転のサービスの開発をしている会社の社長だ。この会社は、2022年ぐらいから、何かと取り上げられるようになってきたが、要はAIを搭載して、接触事故や交通渋滞を減らすようコントロールする会社だ。MaaSの周辺プロダクトのはしりである。

MaaSというのは、Mobility as a serviceの略称でマースと読む。サービスとしての移動の意だ。孫さんは、スマホやロボットは将来、車とも融合し得るものだと、イメージしているのではないだろうか。

そして、最後に登場したのが、2017年当時、ソフトバンクの巨大な買収として世間を騒がしたアームという会社の当時の社長のサイモン・シガースという人。ソフトバンクがアームを買収したときに話題になったのは、その買収金額もさることながら、それがあまりに突然の発表だったこともある。買収に応じるとは思えないオーナー会社だったこともある。

しかしそこを孫さんは、とにかくオーナーを追いかけて追いかけて、トップ会談をもちかけ、熱く説得して粘り勝ちで決めた。そして、帰ってくるなり発表した。そういう離れ業ができるのが孫さんだ。

2023年、9兆円の大型上場に成功

で、その買収金額だが、ソフトバンクの営業利益をはるかに上回る320億ドル相当(当時のドル円レートで3兆7000億円)。どうして、そんな金額を投じてまでアームを買収したかったかというと、2016年当時、世界のスマホのチップの99%はアームのものだったからだ。

スマートフォンのイメージ
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今後、世界中でますます増えていくであろうIoT(Internet of Things)のあらゆるモノの中にアーム製のチップが入ることで、圧倒的なシェアを獲得できる、そう読んで、買収したということだった。

その後、グラフィック系に強いベンチャーNVIDIAが伸びてきて、アームの地位がちょっと揺らぎつつあったところに、コロナ禍における業績低迷で一時期は売却が検討され、マスコミはここぞとばかりに、ソフトバンク2兆円の損失、孫さんは実は投資下手だったなどと騒ぎたてた。が、紆余うよ曲折を経て、ソフトバンクグループ傘下のまま、2023年9月に、米国ナスダック市場に上場。時価総額9兆円の大型上場に成功したのである。

かくして、孫さんは、アリババを泣く泣く手放したものの、アームの投資は見事にうまくいきつつあり、アームを起点としてAI関連投資への意欲をさらに強めている。