強硬に「絶対反対」と主張する彼氏の実家を振り切って、42歳で入籍した女性。その直後、女性の実家には姑・小姑からの愚痴や呪いの言葉がくどくど書き連ねられた長さ11m超の巻物のような長文が送りつけられ、夫は自分の実家からひっきりなしにお金の立て替え要求や無心をひっきりなしにされてほとほと困り果ててた――。
暗い部屋で座り込み、俯いている女性
写真=iStock.com/kieferpix
※写真はイメージです
前編のあらすじ】中部地方在住の片桐蘭子さん(仮名・50代・既婚)は、37歳で離婚した後、39歳で出会った男性と交際し、プロポーズを受ける。彼は、「お袋と姉貴が大反対すると思うけど、絶対に説得するし、できなかったら絶縁してでも結婚するから」と言うが……。 【前編はこちら

彼の家族たち

片桐蘭子さん(仮名・50代)は37歳で離婚し、その2年後に交際を始めた。相手は同い年のIT系企業に勤める男性で、両親のほかに6歳上の姉、5歳上の兄がいた。

片桐さんはすでに結婚を申し込まれていたが、なぜか絶望の淵に追い込まれることになる。その原因となる彼の家族の面々だが、そのプロフィールを簡単に紹介しよう。

彼の父親は、結婚当初から転職を繰り返していたために収入が不安定で、父方の実家の離れで暮らしていた。家計を支えるために母親は、姉と兄を祖父母(母親にとっての義両親)に預けて工場で働いていたが、嫁姑の仲は良くなく、父方の親族たちとの関係も悪かった。

彼が生まれる直前には、父親が祖父母や親戚たちから定職に就かないことをとがめられ、激しい口論になり、実家の離れを出ることに。

そのため、近くに親戚たちがたくさん住んでいるにもかかわらず、冠婚葬祭以外の交流が途絶える“村八分状態”になっていた。

父親の会社経営が安定してきた頃、末っ子の彼が生まれた。関係が断絶していたため義両親に子どもを預けられない母親は、専業主婦になり息子の世話に専念した。

彼の父親は、高校時代に大病を患い、大学に進学できなかったため、「息子たちはいい大学に行かせよう」と教育熱心だった。その甲斐あって兄も彼も地域で1〜2番を争う進学校に進み、有名大学に進学したため、近所では羨望せんぼうのまなざしを向けられていたようだ。

ただ、昔の男性にありがちな男尊女卑の考え方から、「女は大学に行かなくていい。実家から通えるところで働け」と言い、姉は強く反発。母親を味方につけ、一浪して県外の大学に進学した。

やがて父親は、彼が30歳の頃に70代で他界。血液のがんだった。

彼の母親は、幼い頃に戦争で両親を亡くしている。そのせいか、家族への執着が強かった。子どもたちに自分の要望を察するように仕向け、自分の思い通りにいかないと執拗しつように責めることで支配した。自分より格上だと感じた相手へは愛想良く接するが、格下だと感じた相手へはマウントをとるため、“村八分状態”になる前から近所や親戚との付き合いでトラブルが絶えなかった。

一方、彼の姉は、母親の影響を強く受けている上、男尊女卑思想を持つ父親との衝突が絶えなかった。気に入らないことがあると家出し、「縁を切る!」と脅して家族をコントロールしてきた。プライドが高く自分が一番でないと気がすまない性格で、家族の反対を押し切って結婚し、息子を産んでまもなく別居。元夫はすんなり離婚に応じたが、自分の要求を通すため離婚裁判にまで持ち込んだ。現在は大学生の息子と2人で暮らしている。

彼の兄は出版系企業で営業をしており、30代で結婚して大学生の子どもがいる。日和見で事なかれ主義が過ぎる性格のため、結婚後、妻を姑と小姑の嫁いびりからかばうこともなく、2年前から兄嫁は義実家との接触を一切拒否。見栄っ張りで金銭的にだらしがなく、兄嫁に隠れて借金をしては、バレて兄嫁に助けてもらうことを繰り返している。

末っ子の彼については、片桐さんはこう話す。

「私はどちらかといえば楽天的でのんびりマイペースですが、彼は繊細な性格で、アイマスクや耳栓をしないと眠れないようなタイプ。先のことに備えておくことが得意で、冷静に周りを見て判断できる人なのですが、なぜか自分の母や姉に対しては、激昂しやすかったり、簡単に言いくるめられたりしてしまっていたのが不思議でした」