イスラム教徒の多い中東やアフリカの国々では一夫多妻制が認められている。『イスラムと仲よくなれる本』(秀和システム)を書いた森田ルクレール優子さんは「『イスラム教の男性がうらやましい』などと言う人は勘違いをしている。一夫多妻制は男性のためではなく、家族のため、そして女性の負担をなくすためにある」という――。

※本稿は、森田ルクレール優子『イスラムと仲よくなれる本』(秀和システム)の一部を再編集したものです。

ヒジャブをつけた3人のイスラム教徒の女性の後ろ姿
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一人の男性が、何人もの女性と同時に結婚できる

イスラムの特徴に「一夫多妻」があげられます。これは、1人のパパが、何人ものママと同時に結婚できる制度です。

みなさんのパパには、ママは1人しかいませんよね。でもイスラムでは、1人のパパが4人までのママと同時に結婚することが許されています。

おどろきますよね。でも、これには深い理由があります。じつはイスラムが誕生する前の時代は、女性とは何人とでも結婚できる時代でした。そこで「4人まで」と制限をもうけたのがイスラムだったのです。

ただし、イスラム教徒(ムスリム)のパパは、みんな4人のママと結婚しているというわけではありません。そういう人もいますが全員ではなく、むしろ少数派です。

また、一夫多妻をおススメしているわけでもありませんし、条件もあります。

妻を正しく、公平に接することができないのであれば、男性は2人以上の女性と結婚することができません。

たとえば、パパが1人目のママと結婚していて、2人目のママと結婚したい場合、1人目のママが許さなければ結婚してはいけません。

「公平」という絶対ルール

さらに、2人目のママと結婚できたとして、1人目のママに指輪を買ってあげたら、同等のものを2人目のママにも買ってあげなければなりません。

もしママが4人いて、1人目のママに家を買ってあげたら、ほかの3人にも買ってあげるのです。すごす時間も同じです。1人目のママのところで今週7日間すごしたら、来週7日間は2人目のママのところで……と順番にすごします。

どのママにも同じことをおこなう。これが公平という意味なのです。イスラムの一夫多妻は、公平におこなうことが重要なポイントになってきます。

パパも人間ですから、気持ちの上で「このママと一緒にいるときがいちばん楽しい、いちばん落ち着く」ということもあるでしょう。人間は、気持ちの上での順位をコントロールできません。ですが、気持ちの順位は心の中だけでとどめて、実際の行動は公平にしなくてはならないのです。

ですから、ムスリムは、自分の奥さんをみんな大切にします。ママを大切にしない浮気は、とても悪いことなので禁止です。

ただし、1人以上のママと結婚するには、体力も、時間も、お金も使います。よく「イスラム教徒の男性は、何人もママがいてうらやましいね」などと勘ちがいされていますが、じつは「そんなことないですよ」ということが多いのです。