1985年に阪神が日本一になったとき、経営コンサルタントの小宮一慶さんは若手銀行員だった。小宮さんは「日本経済はその後、バブル景気に沸き、バブル崩壊後は長期低迷に苦しみ続けている。名目国内総生産(GDP)の世界シェアは、38年前の半分以下。今回の岡田阪神の優勝がどんな効果をもたらすのか注目したい」という――。
38年ぶり2度目の日本一に輝き、胴上げされる阪神の岡田彰布監督(中央上)=2023年11月5日、京セラドーム大阪
写真=時事通信フォト
38年ぶり2度目の日本一に輝き、胴上げされる阪神の岡田彰布監督(中央上)=2023年11月5日、京セラドーム大阪

岡田阪神“アレのアレ”の経済効果はあるのか

今年は阪神タイガースが38年ぶりに日本一に輝きました。今回はその後の38年間の日本経済に関して所感を述べさせてもらいます。

私は住んでいた地域の関係で小学生の頃から近鉄バッファローズのファンで、近鉄がなくなってからしばらくはどこのファンでもありませんでしたが、高齢者になり昔が懐かしいのか、最近ではバファローズの系譜であるオリックスファンを自認しています。オリックスは、以前はそれほど強いチームではありませんでしたが、最近では3年連続でリーグ優勝など、かなりの好成績を残しました。そのオリックスは日本シリーズで奮闘しましたが、阪神が最終戦の第7戦で見事に勝ち、日本一となりました。

38年前、1985年に阪神が日本一になった時には、3番掛布、4番バース、5番岡田の3主砲がいてチームをけん引しましたが、主軸選手の一人だった岡田監督が今回チームを頂点に導いたことは感慨深いものがあります。

一方、日本経済は前回阪神が日本一になったすぐ後頃から、すさまじいバブルを経験、そしてその後は長期間にわたって低迷を続けています。38年ぶりの阪神日本一は果たして何をもたらしてくれるのでしょうか。

阪神と日本経済…前回優勝38年前に起きたこと

阪神が前回優勝した1985年以降を簡単に振り返りましょう。この年は夏以降に大きなニュースが相次ぎました。私は、その頃、留学のためにアメリカの北東部ニューハンプシャー州に住んでいたのですが、8月に日航ジャンボ機が墜落したのです。お盆前で羽田から大阪・伊丹に向かうジャンボ機が機体の金属疲労により群馬・御巣鷹山に墜落し、乗員乗客のほとんどが亡くなりました。米国でも毎日のようにテレビで大きく放映されていました。米国にいても心が痛んだことを今でも覚えています。

経済的な大ニュースは、9月に「プラザ合意」がありました。主要5カ国の蔵相・中央銀行総裁がニューヨークのプラザホテルに集まって会議を開いたのです。会議のテーマは、円安がメインでした。そのせいで米国は多額の貿易赤字を抱えていました。米国はレーガン大統領の時代でしたが、貿易赤字と財政赤字の「ふたごの赤字」に悩まされていた時期でした。

私は、留学直前は東京銀行(現三菱UFJ銀行)で為替ディーラーの見習いの仕事をしていたこともあり、当時のドル・円レートには大いに関心がありました。プラザ合意直前には240円くらいだったのが、合意後は1年ほどの間に100円ほど円高となりました。