正確なことは学者や専門家に尋ねるのがいちばん

ここまで炎上したマナーについて、実際のところはどうなの? とモヤモヤしているとご質問をいただいた内容のいくつかを例として挙げ、私なりの意見を述べてきました。マナーは歴史やそのときの時代の価値観が複雑にからむので、簡単にいいとか悪いと言えるものではないということが多少はおわかりいただけたと思います。

何度もくり返した通り、マナーに正解はありません。諸説あるなかで何を選び、何を実践するかは個人の自由です。

マナー講師の言うことをすべて鵜呑みにする必要はありません。

マナー講師には国の資格制度もなければ、統一された教育カリキュラムもないのが現状です。自分で名乗ってしまえば、それでマナー講師になれる世界です。マナーを深いものととらえ、幅広く実直に学んでいる人もいれば、そうでない人もいます。だから講師によって言うことがバラバラ、という事態も起きているわけです。

マナー講師はマナーを人に伝える専門家ですが、全員がそれぞれのジャンルに精通しているわけではありません。本当に正確なマナーを知りたいなら、葬儀でのマナーは仏式なら僧侶、神式なら神主や葬儀会社に聞くのがいちばんだし、結婚式のマナーは結婚式場に聞くのがもっとも間違いのない方法です。敬語などの言葉遣いについても、正確な知識を持っているのは言葉を専門に研究している学者たちです。

中華風の空間でお互いにお辞儀をしている二人
写真=iStock.com/stockstudioX
※写真はイメージです

仏式のマナーを伝えるため、得度を受けて学び続ける

私自身も日々、それぞれのマナーを勉強してはいますが、時代によってマナーは変わるため、すべてを追い切れているわけではありません。時には今の現場を知らずに、以前のマナーをお伝えすることもあります。そういう場合は、葬儀会社のかたや結婚式のスタッフのかたから、お叱りをいただくこともあります。

そのたびにお詫びをして、最近の現場におけるマナーを学ばせてもらうことのくり返しです。ちなみに、葬儀のマナーについての取材が多いこともあり、日本ではもっとも多い仏式のマナーを伝えるためにも、私は2023年に得度を受け、僧名「凛水」として、師匠である、浄土宗西山深草派大本山圓福寺第85世住職の小島雅道上人に師事しています。