アンケートを取ることはお客さまにとって迷惑

お客さま第一というと、お客さまにアンケートを取ろうと考える方も多いでしょうが、そういうことではありません。経営コンサルタントの一倉定先生は、アンケートを取るというのは基本的にお客さまにとって迷惑な話だといっています。

もちろん、お客さまが満足されているかどうかなど、お客さまに聞かなければ分からないことを簡単に聞くのであれば、それは必要なことです。けれども、何ページもある質問票に答えさせたうえに、具体的なフィードバックもないようなアンケートは、お客さまにとって迷惑でしかありません。

私自身も、アンケート用紙への記入を求められて、迷惑に感じた経験があります。

ある航空便に搭乗した際の機内でのアンケートで、発着地など、自社で分かることを自分で記入しなければならなかったのです。機内で配っているわけですから、当然、アンケート用紙を配ったスタッフは発着地などを知っているはずです。お客さまの手を煩わせるべきことではありません。

結局、お客さまのためではなく、内部志向で、自分たちのためにアンケートを取っているのです。

アンケートを記入する手
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やるべきことを「徹底」できるかが重要

「良い会社、悪い会社はない。あるのは良い社長、悪い社長だけだ」という一倉定先生の言葉があります。「できることはすべてやれ、やるなら最善を尽くせ」というカーネル・サンダースの言葉もありますが、「やるべきことを徹底できているか」は、経営者の資質とともに、社風によるところが大きいと私は考えています。

ドラッカーは、最初にやるべきは「現在の事業の業績向上」、次が「機会の追求」、3番目が「新規事業」だといっています。この順番で難しくなっていくのです。なお、機会の追求とは、事業を展開する地域を広げたり、同じ商品で顧客層を変えたりすることです。

そして、現在の事業の業績を向上させるためのキーワードが「徹底」です。徹底できる会社であれば、機会の追求もできるし、新規事業も成功させられます。けれども、現在の事業を徹底できていない会社が新規事業を立ち上げても、なかなかうまくいきません。

現代のような不確実な時代を生き抜くうえでは、従業員同士が迅速かつ適切に意思を疎通したうえで、目の前の変化に対応できるか否かがカギを握ります。それはつまり、「良い意味でのコミュニケーションがとれているか」という問いにもつながる話でしょう。