シェフも困惑する「サービス要求型」のお客さん

ところが、挨拶に出てきたシェフに、女性たちは何度も「予約を忘れていたのだから、ボトルワインをサービスしてよね!」と迫る。シェフは苦笑いして受け流していたが、その後も繰り返し「グラスワインでもいいから」「じゃあデザートをサービスしてよ」などと言う。シェフはむしろサービス精神旺盛な人だが、こういう「サービス要求型」のお客さんに遭遇するとパタっと心を閉じてしまう。そしてお客さんが帰った後に疲れた顔をして、そのモヤモヤを閉店後も引きずっている。

長引くコロナ禍で個人経営の飲食店がどこも厳しい経営を強いられていることは、誰でもわかっているはずだ。常連さんたちはむしろ、高めのワインを注文してくれたり、我々スタッフにお酒をごちそうしてくれたりして、お店の売り上げを増やそうとしてくれる

私も行きつけの店ではお釣りを受け取らないなどして応援こそすれ、店から特別なサービスをしてもらおうなんて思ったことはない。しかし、中には「少しでも得したい」と、ギリギリで踏ん張っているお店から上乗せのサービスを引き出そうとするお客さんもいるのだ。

泥酔して殴り合い、椅子を破壊した夫婦

これも滅多にないことだが、泥酔するお客さんも困ったものだ。お店にとって、お酒をたくさん注文して飲んでくれるお客さんは良いお客さんだ。しかし、これにも限度がある。

最近、家族で来て飲み過ぎた夫婦が、店内で喧嘩を始めたことがあった。口げんかだけならまだしも、幼い子供や他のお客さんがいる前で夫婦で殴り合い、蹴り合いになり、店の椅子を一脚叩き壊して、そのまま帰ったそうだ。翌日、バイトに入った私は、店の片隅に脚の折れた椅子が置かれているのを見て、「これ、どうしたんですか?」と聞き、前日の悲劇を知った。

椅子の代金だけはもらったそうだが、粗大ゴミに出す費用や新しい椅子を購入して送ってもらう手間や送料などを考えると、店の負担は大きい。その夫婦は、後日、謝罪に訪れることもなかったそうだ。

テーブルで議論する人の手
写真=iStock.com/AntonioGuillem
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さらに、地味ながら店として確実に困るのは、連絡なしで予約した時間に遅れたり、予約の人数が減ったりすることだ。お客さんに予約してもらった時間はその人数分の席を確保しなければいけないから、他に席がない場合、新しいお客さんが来ても断らなくてはいけない。店にとって連絡なしに予約をすっぽかされると、本当は稼げたかもしれない利益をふいにすることもあるのだ