アマゾンから抜け出せない仕組み

アマゾンが急速に規模を拡大できたのは、消費者と出店者が同時並行で増えていくその仕組みにある。消費者が集まれば、集客を目当てにした出店者が増える。出店者が集まれば、品ぞろえが豊富になり、また消費者が集まる。こうして拡大したアマゾン帝国で問題になっているのが、出店者や商品を納入する取引先に対するアマゾンの「いじめ」だ。

座り込んで悩む女性
写真=iStock.com/Tinnakorn Jorruang
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2022年秋、カリフォルニア州の司法当局は、競争法違反でアマゾンを提訴した。訴状には、出店者がアマゾンからどんな要求をされているかが赤裸々に記されている。

訴状によると、アマゾンは、競合他社の価格を監視し、他社が価格を下げればアマゾンも下げる、という価格戦略を採用。出店者に「自動価格変更サービス」を使うよう促し、アマゾン以外のネット通販サイトが提示する最低価格に常に一致するようにしているという。従わない出店者には、カートボックスから外すといったペナルティーが科される。カリフォルニア当局は、これが他の通販サイトが安い価格を提供することを妨げていると問題視した。

なぜ取引先はアマゾンの理不尽な要求に耐えているのか。別のネット通販事業者に乗り換えればよいではないか、と思う人もいるかもしれない。しかし、アマゾンへの依存度が高いがゆえに、出店者はそこから抜け出せなくなっている。

アマゾンの要求に応じる背景について、ある出店者は次のように語ったという。

「私たちは他に行くところがなく、アマゾンはそれを知っている。アマゾンから出店を停止されて売上の90%を失えば、ビジネスは成り立たなくなる。私たちはアマゾンから抜け出せない」

「最低マージン契約」

アマゾンの圧倒的な支配力を示す出店者の声もある。

「出店者は交渉力をまったく持っていない。すべてが『無条件に受け入れるか、やめるのか』。交渉力はすべてアマゾンにある」

出店者は報復を恐れ、不満の声さえ上げられないのだという。

「(問題があることを公に言えば)アマゾンは商品検索でその出店者の商品を見つかりにくくしよう、と言うかもしれない」
「私たちは(アマゾンの競合他社に)勝ってほしい。彼らはいじめっ子じゃないから」
。そこまで言う出店者もいる。

当局は、アマゾンが納入業者と「最低マージン契約」を結んでいることも問題視した。アマゾンの利益が契約で定められた「最低マージン」を下回った場合、納入業者がその分を補填するのだという。つまり、納入業者がアマゾンの利益を確保する義務を負うことになる。

家電製品を納入する業者は「ある商品でより安い価格を見つけた場合、アマゾンはその価格に合わせて自らの価格を下げる。次に、アマゾンの利益率を維持するために穴埋めを求められる」という。この業者は「補償金は払いたくないが、要求を拒否した場合のリスクが大きすぎるため、アマゾンの要求に従わざるを得ない」と証言したという。