資産運用で失敗してしまう最大の要因

納得できない? だったらこう考えてみよう。

100万円を運用して、年10%の利益を得られたとしよう。いまはゼロ金利だから、これは投資としては素晴らしい成績だ。でもそれによって獲得した富は100万円の1割、10万円だ。

それに対して1億円を年10%で運用できれば1000万円、半分の5%でも500万円になる。このように、投資は元本が大きければ大きいほど効率がよくなる。この鉄則を金融資本と人的資本にあてはめるなら、若いときははるかに元本の大きな方=人的資本の活用に全力をあげるべきなのだ。

もっとも、金融資本とちがって、人的資本を運用して得た500万円や1000万円をすぐに現金で受け取れるわけではない。人的資本は将来の期待収入の合計、つまりヴァーチャルな(仮想の)収入だから、リアルな収入(月給)との差額は後払いになる。

その代わり人的資本には、金融資本にはない大きなメリットがある。

銀行預金や債券など元本が保証されたものを除けば、金融資本の投資にはリスクがある。これは、大きく儲かることもあれば、大きく損することもあるということだ。ところがほとんどのひとは、儲かることばかり考えて損することを想像できない。これが、投資(資産運用)に失敗するいちばん大きな原因だ。

それに対して、人的資本の活用にマイナスはない。働けば必ず収入を得られるのだから、これは「損をしない投資」みたいなものなのだ。

確実なのは「長く働く」か「働く人を増やす」

収入を増やすには3つの方法がある。

①人的資本を大きくする
②人的資本を長く運用する
③世帯内の人的資本の数を増やす

人的資本を大きくするというのは「もっと稼げる自分になる」ことで、これは一般に「自己啓発」と呼ばれる。1億円だった人的資本を2億円、3億円へと大きくすることができれば、それにともなって収入も増えていくだろう。これはものすごく達成感があるのでとても人気があり、書店に行くと自己啓発関係の本がたくさん並んでいる。

それに比べて②と③はほとんど指摘されないけど、①と同じくらいか、あるいはそれ以上の効果がある。いちばんのちがいは、自己啓発はうまくいくこともいかないこともあるけど、こちらは確実に収入が増えて失敗がないことだ。