初めて1つの部門を任されたとき、部下に見抜かれた「弱み」

数字に強くなければ経営者は務まらない、とはよく言われることです。今さらこのようなことを言うと各方面からお叱りを受けそうですが、僕は数字に弱く、そのことにコンプレックスを持っていました。

昔の話になりますが、20代後半の頃、マネージャーとして初めて1つの部門を任されるようになったときのこと――。人事の「360度評価」で、部下から「英邦さんは数字に弱いです」と書かれたことがありました。そのときショックは受けつつも、「なるほど、そうだよな」と納得したのです。

言われてみればもともと僕は、ものごとを評価するにも感覚的で、定量的観点よりは定性的なテーマに興味を持つタイプです。若手の頃、営業の仕事をしていても、どこか頭の片隅に「数字は結果でしかない。大事なのはその過程だ」と考えていたところがありました。

とはいえ、さすがに部下からそう指摘されては、反省するしかない。将来、大きな組織のマネジメントを行うことを考えれば、このままでいいというわけにはいきません。これを機に、僕は気持ちを入れ替えて、数字に向き合おうと決めたのです。まず思いついたのが、経営に関する数字をノートに書くことでした。

苦手な数字を克服するために、会社のあらゆる数字をグラフ化

入社して間もない頃から、自分の疑問や考えをA3の紙に書く習慣があったので、その紙に部門ごと、品目ごとの売り上げや利益をひたすら紙に書きまくりました。手書きがいいと思ったのは、昔やった受験勉強と同じで、そのほうが記憶に残りやすく、体で覚える感覚があるからです。

それからしばらくして、コクヨの社外取締役の方々に経営改革について教えていただく機会がありました。あるとき社外取締役の一人に、「自分は数字が苦手なのだ」と相談したところ、「たいていの経営者がそうなんだよ」と言われました。そしてその解決法として、「面グラフ」を書くことを勧められました。僕は「面グラフ」と言っていますが、会社のあらゆる数字を棒グラフや円グラフなどの図に置き換えて理解するということです。結果的に、それが本格的にA3の方眼ノートで経営を考えるきっかけになりました。

簡単な例を挙げましょう。単年度の会社の利益構造を数字でつかみたい場合です。売り上げ(金額)を縦軸にとり、年度(時間)を横軸にとって、まずある年度の売り上げを100%とした面グラフを書きます。次に、粗利率が40%だとしたら、縦軸で40%のところに横線を引きます。次いで、販管比率が25%だとしたら、今度は縦軸で25%のところでまた横線を引く。そうすると、2本の横線で区切られた面積15%(=40%-25%)が「営業利益率」になります。

今度は15%のスペースに縦線を引いて、営業利益率を構成する内訳でスペースを割っていきます。たとえばスチールデスクが全体の50%とか、椅子が全体の何%だとか、細かく縦線で区切っていくのです。そうすると、利益構成が面積で把握できます。このように細かく書き込んでいくので、A3サイズの大きなノートを使ったほうが便利なのです。

この作業を続けていくうちに、大事なのは単体の数字ではなく、数字と数字の関係性や割合を、図にして一目でつかむことだと気づきました。会社のあらゆる数字をノートに書き込んでいくうちに、目から鱗が落ちるように、数字が持つさまざまな意味を理解できるようになりました。入社した頃から、A3のノートに思いついたことをあれこれ書いてきたのも、このときのためだったのか、と思ったものです。