プラスアルファとしての日本流「おもてなし」

インバウンドは、日本流「おもてなし」を求めて来日しているわけではない。日本にわざわざ来ているのだから「日本のおもてなし」を求めているはず……というのは思い込みなのかもしれない。

一方で、海外富裕層向けの「おもてなし」は、海外ホテルのコンシェルジュなどと比べると、もっと改善の余地がありそうだ。

当たり前だが、高いホテルに高い料理に高いサービスに、特別なオプショナルツアーを用意すればいいという単純なものではない。海外の富裕層は、値段ではなく、人と違う場所やサービスを求めたり、多忙な日常から離れ、ただゆったり家族やパートナーと滞在することを求めたりする場合も多い。日本人のような弾丸旅行や詰め込み過ぎのスケジュールを好まないこともある。必ずしも日本流のおもてなしを求めている訳ではなく、受け入れる我々日本人側の自己満足だったりする場合もあるので、注意が必要だ。

無論、笑顔での対応や丁寧な言葉は、万国共通で温かく心地よいものだ。インバウンドへの対応は、彼らが慣れているグローバル・スタンダードなサービスが基本であり、プラスアルファとしての日本流「おもてなし」サービスを加えていくという形が理想なのかもしれない。

仲見世から見える浅草寺
写真=iStock.com/AsianDream
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日本が評価されている「3つのポイント」

①治安のよさ

インバウンドが日本に滞在して評価するポイントは、①治安のよさ、②清潔さ、③公共交通の3点が多いという。

特に、最も高い評価ポイントは、やはり日本の治安のよさではないだろうか、ロシアによるウクライナ侵略や、日本人ビジネスマンの中国での拘束など昨今の地政学リスクの高まりのなか、「夜遅くても1人で歩ける」し、「財布を無くしても交番に届けられ戻ってきた」など日本の治安の良さは、海外でも変わらず高く評価されている。いつの時代も安全か否かは、旅行先を決める際の最も重要な決定項目でもある。

もっとも、日本においても特殊詐欺グループによる強盗など、治安悪化を懸念する声に加え、京都・清水寺での盗撮犯罪、関西国際空港行き電車内でのスーツケースの盗難事件など、インバウンドを狙った犯罪行為が増えてきており、官民が連携した対策が必要になってきてはいる。

②清潔さ・③公共交通の利便性

また、②清潔さを挙げる声も多い。多くの道路や街並みはきれいであり、ゴミのポイ捨ても少ないという。意外なところでは、公共施設などでのトイレのきれいさだ。海外では、先進国においても、どう使ったらこうなるのか、しばらくトラウマになるほど、酷いトイレに遭遇したりする。

それから電車やバスなど③公共交通の発達と便利さを挙げる声も多い。最近は、事故や自然災害により、新幹線を含め遅延が多くなる傾向にあるが、電車やバスが時刻表通りに到着するなど、その正確性と利便性への評価も多く聞かれる。