阪神淡路大震災で多数発生した恐ろしい「電気火災」

一方、現在は「電気火災」が怖いと指摘し、「阪神淡路大震災ではかなりあったと聞いている」という。地震でいったん停電して復電した際に、電気ストーブに可燃物がひっかかっていることもあるほか、家屋倒壊などで電気ケーブルが損傷してショートすると、電気火災が発生する。

阪神淡路大震災の火災
阪神淡路大震災の火災(写真=神戸市/CC-BY-2.1-JP/Wikimedia Commons

電気ケーブルは多くの銅線が束ねられた状態にある。桑名教授によると、家屋や家具などの倒壊で電気ケーブルの一部の銅線が切れると、残って通電している銅線の電気抵抗が増し、熱が出てくるという。現代の地震では、こうした「半断線」が電気火災につながる恐れがある。

最近の異常気象など、気候変動も火災のリスクを高めているとの指摘も出ている。国際研究グループ「ワールド・ウェザー・アトリビューション」(WWA)は、カナダ東部で今年5~7月に多発した山火事と気候変動との関係を調べた結果を発表。地球温暖化により、火災が起きやすい気象条件になる確率は2倍以上になっているという。今年5~7月の東部ケベック州の気象条件について、気候変動の影響でどれくらい山火事が起きやすいかを分析したもの。

火災のリスクは「日本でも気候変動により、降雨が少なくなり、林床に届く日射が多くなるなどで変わってくる」と林野庁の担当者は話す。

乾燥した気象条件や風が強いかなどの自然条件が、火事の大規模化に大きく影響する。火事が短時間に一気に広がるのは「火の粉による飛び火もある」(桑名教授)。火事が一カ所から広がっていくのか、マウイ島の事例ように、同時多発的に“前線”のような広がり方をするのかで、避難の仕方も違ってくる。

さらに怖いのが火災旋風。そのメカニズムについて、桑名教授は「おおざっぱなことしかわかっていない」と話したうえで、「発生しやすい条件がそろうと次々に出てくる」という。大規模な火事があると起こりやすいとも。関東大震災の本所被服廠跡のように、多くの人が避難しているところで火災旋風が発生し、人々が火に囲まれてしまうと、逃げられなくなるとみている。

火事が起きても、「初期消火ができればかなり違う」と桑名教授は話す。初期消火ができなければ避難を考えることになるが、「あらかじめ避難について考えておくことが大切」という。

たとえば、建物の1階であれば避難もしやすいが、2階にいると逃げる時間が少なくなる。火事にどの時点で気づくことができるか、さらに事前に避難の仕方を考えておくことも重要になる。

大規模な火災は、地震などで日本でも起こり得る。普段からの備えや対策などが大切になる。桑名教授は「少しの気持ちの持ち方でだいぶ違ってくる」と話す。

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